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会わせて欲しい
そんな交換条件を出してみたものの、ちょっと違ったかもって後から後悔した。
だってほら、マネヒョンは手話ができるわけじゃなくてテイリヒョン方式の強引なコミュニケーション方法だから言葉を伝える手段が難しいっていうのが一つ。
もしかしてこの子達は自分のことを知らないんじゃないかというのがもう一つ。
だってほら、今となってはけっこう前の話でしょ？
可愛らしい年齢の彼らなので、自分が登場したところで「誰？」と言われてしまっても仕方がない。
だから最大限、あの頃の自分の姿になれるように努力したのだ。
服装とか、男の子っぽい仕草、
ちょっと伸びてきた髪の毛はキャップで隠して誤魔化した。
ホテルを出る前、大丈夫かなって鏡の前で何度も確認作業をしながら、頭の中で用意したセリフを繰り返した。
わざわざバルセロナまで行くのはただの旅行のついで。
ついで、だもん。
赤くポイント付けられたマップの位置を目指しながら、カメラの機材や人がたくさん集まるある一点に彼らがいる場所はすぐに分かった。
自分が声をかける前にマネヒョンが気づいてくれて、手を振り合っていればメンバーの2人とも目が合う。
テヨンイヒョンが赤ちゃんたちって言っていたのがまさにそうで、キュルンとした水分量の多い瞳を向けられて内に秘める母性本能がくすぐられた。
か.....かわいい、！！！！
おっと、危ない。
あの子たちはわたしのことを何も知らないんだから、第一印象は大切にしないと。
「はじめまして」
わざわざ集まってくれた彼らに、シュミレーション通りの挨拶をする。
第一印象がどうとか言いながらわたしが"NCTのA"を演じるのは、おそらく今日が最後。
練習生のジェヒョンみたいな顔をした子(めちゃくちゃかわいい)が何かを言って、みんながNCT特有の挨拶のジェスチャーでぺこりと頭を下げてくれた。
いいね。これだったら言葉が届かなくてもよく分かる。
sakuya「リョウ！今だよなんか言えよ！」
ryo「ちょっ、本当にいいって、やめろよ」
さっき目があった2人がマンネの子たちで、おそらく日本語で何かを言い合いながら肩をぶつけ合っている。
キラキラの衣装を身につけて、風貌はアイドルなのに見てとれる雰囲気が日本の男子高校生そのもの。
誰かを幸せにできる音楽がここにはあるんだと思うと、
耳を澄ましてその音を拾いたいと強く願った。
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作者名：ナカム
| 作成日時：2024年1月28日 20時
