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NCTWISH RYO
その人は、自分がドームでNCTを見た頃にもうグループにはいなかった。
映像の中だけで、何度も繰り返し再生したお気に入りのチッケム。
出演したバラエティーやコンテンツで見る姿で、彼の人となりを勝手に想像した。
そう。簡単な言葉で説明するならばファンだったのだ。
でも彼自身が卒業後の進退をはっきりさせていなかったのもあるし、
自分が夢を追いかけるのに忙しくなってしまったのもあってその後何をしてどう過ごしているのかは何も知らなかった。
sakuya「急に静かになるじゃん。緊張してんの？」
ryo「するに決まってるから。ちょっと黙ってて」
自分のグループのデビュー曲が憧れのその人が作ったものだと知った時もこれ以上ない幸福感を味わったというのに。
まさか会える機会まであるなんて、あまりにも信じられないじゃないか。
完全に運、使い果たしてるよね？
sakuya「レコーディングの時も見にきてたじゃん」
ryo「俺たちは見てないけどね」
sakuya「いやまぁそうなんだけど(笑)」
どうやらレコーディングの時も俺たちのことを見にきていた"らしい"。
後々マネヒョンから聞いて、しつこいくらいに本当のことか確認した。
ずっと画面越しに見ていた人に初めて会うんだ。
そんな瞬間、緊張しないわけがない。
sakuya「会ったらなんて言うの？」
ryo「何も言わないよ。俺のことを視界に入れてくれるだけで十分」
sakuya「やばい。厨二病だwwww」
隣でデリカシーのかけらもなくゲラゲラと笑うサクヤ。
ごめんけど今だけは少し離れた場所にいてくれた方が助かる。
あ、。
マネヒョンが道の向こう側にいる人に手を振って、る？
まって。俺はまだ心の準備が出来てないよ。
sakuya「あ、リョウ！！！！！来たって！！！！」
ryo「痛い！分かってる！！！俺にも見えてるから！！！！」
腕を叩いてくる手が痛いけど、自分の心臓の音の方がドクドクと身体を支配していてぎこちなくなる。
さっきまでゲラゲラ笑ってたくせに、わりとしっかり緊張してるサクヤが可愛くて一瞬緊張の糸が緩んだ。
キャップを少し上げて俺たちの方へ頭を下げたその人。
はにかんだ笑顔と優しい雰囲気は幾度となく再生したチッケムの中の一場面とピッタリ重なる。
本物のあまりの綺麗さに
瞬きをすることさえ忘れてしまいそうだった。
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作者名：ナカム
| 作成日時：2024年1月28日 20時
