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◇◆◇
──それまでの全てを否定するような、呆気ない幕切れだった。
重いまぶたを上げれば、よくある無機質な印象の天井。
薄いカーテンが引かれた窓の外は明るい。
重怠い首を巡らせば、簡素な棚(何も入っていない)に、自分が寝ている寝具のしわも確認できた。
全体に明るく清潔な雰囲気の部屋に安堵しかけるが、直後、覚醒した頭がまるで見覚えのない空間に警戒し、Aは跳ね起きた。
すると部屋の隅で壁に凭れた女性と目が合う。
人が居たとも思わなかったためにAの肩が大仰に跳ねた。
それを見た女性は安心させる様に微笑む。
「危害を加えるつもりはないから、どうか楽にしててちょうだい」
その優しい笑みに悪意を感じなかったので、一先ずAは胸を撫で下ろすが警戒は解かない。
「ここは警察病院よ。私はヒーローのミッドナイト。怪我はなかったみたいだけど、どこか痛いところとかないかしら？」
「……ない、です」
「そう、よかった。じゃあいくつか確認したいことがあるのだけど、現状の把握はできてる？」
現状。
(わたしはオールマイトを殺すための襲撃に参加して──)
死柄木等がワープするのを呆然とただ見ていた。
連れていって貰えなかったことから、本当に棄てられてしまったのだと気付いたあのとき、自分を突き飛ばした少年に掴みかかろうとした途端、隆起したコンクリートに阻まれて、何故か眠ってしまい今に至るのだと思い出す。
ああ、そう、そうだ。
(わたしは、棄てられたんだ)
改めてそれを理解してしまえば、あれほど恐れていたはずなのに心境は随分あっさりしたものだった。
そのことに内心首を傾げるが実際はすべてがどうでもよくなっただけだ。
自暴自棄とも言える。
それ等も表情には表れはせず終始無気力な無表情だが。
もはや他者を攻撃する意味も理由もないのでAは警戒するのを止め、大人しく質問に応じる姿勢をとる。
「貴女の名前は？」
「……A。名字は、……思い出せません……」
「歳は？」
「……十六でした」
「高校生かしら、学校は？」
「通っていました、高校です」
「学校名は？」
「……すみません、思い出せません」
「家族は？」
「……」
「家は？」
「……」
訊かれたのは至って普遍的な内容だった。
しかしAにとっては始めから答えにくいものばかり。
個人情報だから隠したいなどとは思ってもいないのだが、それ以前にそもそも思い出せなかったのだ。
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詞葉(プロフ) - 蓮さん» コメントありがとうございます。とても嬉しいです！ 何分遅筆なものでお待たせすると思いますが、是非よろしくお願いします。 (2020年3月12日 12時) (
レス) id: dc1dd40e5c (このIDを非表示/違反報告)
蓮(プロフ) - とても面白いです…！更新楽しみにしてます！ (2020年3月11日 1時) (レス) id: 0d837f5408 (このIDを非表示/違反報告)
詞葉(プロフ) - 桜猫さん» コメントありがとうございます。ちょっと迷走しつつあるので気長にお待ちいただければと思います。いただいたコメントでモチベ上げて頑張りますね！ (2019年9月2日 23時) (レス) id: df44a89d14 (このIDを非表示/違反報告)
桜猫(プロフ) - 夢主ちゃんの今後が気になりますな… (2019年9月2日 17時) (レス) id: b3a762d464 (このIDを非表示/違反報告)
詞葉(プロフ) - ルーさん» コメントありがとうございます。とても嬉しいです！ 仕事の合間にぽちぽちするのでゆっくりになりますが、ハピエン厨なのでそうしたいと思っています。 (2018年2月8日 17時) (レス) id: 703ce966a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：詞葉 | 作成日時：2017年10月7日 13時
