リトル・ヒアー III (ページ13)

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113dB ページ13

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わく、早くAに

って、あれ？

『わ、湧くん…！』

湧｢え？えっとー…｣

『ちょっとだけ時間、もらえないかな…？』

おっと…。

そうか、、このパターンを忘れてたかも。

あんまり面識の無いその女の子に戸惑ってるわくを見れば、バチっと目が合って

ごめん、頼む！って口パクしながら手のひらでジェスチャーする顔が必死だから

湧｢分かった、あっちでもいい？｣

『う、うん…！』

少し遠くに離れていく背中に、

ほんっと仕方ないなあって。

でも優しい湧はああいうの断れないし、キッパリ返事してからくるって分かってるから。

だからそれまで、おれがAに近づくやついないか見張っててあげるよ。

｢A、あっちで座ってよ？｣

A｢うん、疲れたなあ｣

ぼけっとしてたこの子は、後ろで行われてたわくの一部始終を見てなかったみたいで

きっとわくはドキドキしてたまんないだろうに、少しも緊張感のない目の前のAが対象的でおもしろい。

Aらしいと言えばAらしいんだけど(笑)

A｢、！わあ｣

颯太｢？どうした？｣

A｢…わく、すごいね｣

ちゃんと見るの初めてかも…！って珍しくノールックでおれに言うAの目には
遠くのわくから、他にハチマキを交換している子達までがずいぶんと広く映っていて

あなたも数分後にはああなるんですよ〜、なんて口から出そうになった言葉を飲み込んだ。

てかまだあ？ちょっとだけって言ってたよね？？

A｢颯太は誰かにハチマキ渡さないの？｣

｢えー？(笑)｣

渡したかったけど、おれかっこいいから譲ったの。

って、またまた心の中でほんとの返事。

だからもう必要ないし、うちむらそうたって書いてある少し汚れた手元のハチマキは

そっとポッケにしまった。

｢…Aこそいないの？｣

A｢わたし？んー…｣

悩むってことは、きっと今この子の頭の中にはあの人が浮かんでるんだろうなあ。

それならって、早く背中を押してあげたくて

遠くを見てからきゅ、と下唇をかんだAの身体を引っ張って、ゆっくり立たせた。

おれ今日かっこいいから
最後までかっこつけさせてね、なんて。

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