ずっと。 ページ19
Aside
今日も、外を眺めていた。
ヨコハマの、海を――――。
横にはいつも通り、中也がいる。
でも、いつもと違うことがひとつある。
いつもより、心の底から色んな感情が溢れてくるのだ。
最近は、ただどうしようもなく悲しくて、無力感に苛まれていた。
その中で、中也の存在だけが唯一の救いだった。
でも記憶は曖昧で。
過去という物が何かさえ分からなくなるときもあった。
もう、私に過去なんて無いはずなのに、まるで、複雑でそれであって幸せな沢山の過去を持っているかのような、複雑な感情が湧き出てくる。
まるで、今までの中也との記憶が全て残っているかのように。
幸せな記憶が心の底から溢れてくるような感情になるのだ。
この感情はきっと、神様が与えてくれたんだ。
Aという人間の終わりを告げる日に。
――――――――――――――ねぇ、中也
どうした?と、中也の優しい声が帰ってくる。
「私、中也と出会えて良かった……。中也と出会えて、本当に幸せだった…………」
中也が、目を見開いて私を見た。
目頭が熱くなって、中也の顔がぼやけていく。
悲しくて泣いているはずなのに、えへへ、と笑みが零れる。
ぽとぽと、と涙が落ちる音が部屋に響く。
「ちゅ……う…や………」
名前を呼んだら、さらに涙が溢れてきて、手で顔を覆った。
泣き止もうと、深呼吸をしようとしても、嗚咽で、上手く息を吸えない。
ふと、頭に温かい感覚がした。
顔を上げると、中也が私の頭を撫でていた。
凄く、悲しそうな顔。
でも、いつも通り、優しく笑ってくれる。
「俺も、Aと出会えて、本当に良かった……本当に、幸せだった……」
そこまで言うと、ギュッと私の体を抱き締めた。
中也の体温が、冬の冷え切った私の体をじんわりと温めて、それがあまりにも幸せで、涙が止まらなくなる。
「A…………俺は、お前が記憶をなくしたとしても、絶対お前のそばにいるから、離れたりしねェから、大丈夫だ。絶対、一緒にいる。」
「うん……ありがとう……」
そういって、顔を上げて、触れるだけの優しいキスをした。
「中也…………記憶が無くなっても、
ずっと、中也のこと、愛してる――――――。」
「あぁ、俺もずっと、
Aを愛してる――――――――。」
そう言って、もう一度、優しくて甘い、キスをした。
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nao - 私情はさみます……すいません、覚えてるかな、うちのことmaoです、これ見てくれてたら嬉しいです、そして返信くれると嬉しいな……… (2020年9月29日 23時) (レス) id: cb11543b97 (このIDを非表示/違反報告)
きおく(プロフ) - やっぱりハッピーエンドですよね…!!分かりました!!夢主ちゃんも中也も幸せにします!!コメントありがとうございました!!! (2019年9月26日 17時) (レス) id: 8fb2214b40 (このIDを非表示/違反報告)
ありさ(プロフ) - ハッピーエンドにしてあげて下さい!! (2019年9月26日 17時) (レス) id: 2eff2af79a (このIDを非表示/違反報告)
きおく(プロフ) - なるほど…!!ありがとうございますー!!! (2019年9月24日 18時) (レス) id: 8fb2214b40 (このIDを非表示/違反報告)
れいな(プロフ) - 私はハッピーエンドがやっぱりいいです! (2019年9月24日 12時) (レス) id: 11efb22fa1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きおく | 作成日時:2019年7月22日 18時