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「でっか……」
見上げる先にはコンクリート打ちっぱなしのお洒落マンション。
おそるおそるエントランスをくぐって言われた通りの番号を押すと、あっさり建物の中に入れた。
次にエレベーターに乗り、また言われた通りの階数を押せばぐんぐんと足元からエレベーターが上がっていく感覚が伝わってくる。
なぜ俺がここにいるのか、一番分かってないのは俺自身だと思う。
「伊野尾さんの家に行ってほしい!?」
教室内に響き渡るような大声で叫んでしまったけど、誰もいないのが幸いしたのか咎める人はいなかった。
な、なんで家っていうか、いきなり家!?
いつか行ける機会があればと思ってたけどいきなり家!?
「…まだ先生、山田先生?」
「っあ、すみません」
動揺しすぎて一瞬意識がどっかいってた。
気づいたら目の前で薮さんが顔を覗き込んでいる。
「まずなんで伊野尾が山田先生の誘いを全部断ってたかなんですけど、簡単に言えば仕事です」
「仕事?」
「うち、俺は元ですけど会社のスケジュールが今の時期詰まってるんです。だからやらないといけないことがたくさんあって、仕事量もその分めちゃくちゃあるし、なんせ伊野尾は優秀だから他の人より多くの仕事をこなしてると思います」
「そうなんですか…」
なんか仕事出来そうな雰囲気はあったけどやっぱり本当に出来る人なんだなぁ。
「で、ここからが問題です」
ピッと人差し指をあげて、真剣な顔をする薮さん。
ゆうりくんも下で同じポーズを取っている。
「伊野尾は忙しくなると生活能力がガクンと落ちます」
「えっと?」
「極端に言うと──寝る以外しません」
「はい!?」
寝る以外しませんってどういうことだと思ったけれど、そういえば最初に会った時も伊野尾さんは倒れていた。
もしあの原因が仕事だとして、それってとてもまずいことなんじゃ……
「いつもはさすがにやばくなったら俺とゆうりが行って色々してたんですけど、それを今回は山田先生にお願いしたいと思って」
「俺ですか!?」
色々してあげるってそんな、数回しか会ったことないのにそんな人を家にあげてしまっていいのだろうか。
不安そうな雰囲気を感じ取ったのか薮さんもしょぼんとしている。
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とい(プロフ) - 雪音さん» コメントありがとうございます!指輪のところは一番書きたいところだったのでそう言っていただけてうれしいです! (2023年5月1日 11時) (レス) id: ee8bc6596a (このIDを非表示/違反報告)
雪音(プロフ) - 最後の指輪のところでめっちゃキュンキュンしました! (2023年4月28日 21時) (レス) @page19 id: 287eadd06c (このIDを非表示/違反報告)
べるはち(プロフ) - といさん» すごく好きなお話だったので思わずコメントしてしまいました!気長に待ってるので是非是非お願いします! (2023年4月23日 1時) (レス) id: 5fcad35e9b (このIDを非表示/違反報告)
とい(プロフ) - mai6943さん» 前回はコメントありがとうございました!大変遅れてしまいましたが、まだ読んでくださっていてうれしいです。なんとかくっつかせたいのでそうですね、気長に…(笑)、待っていただけたらと思います。 (2023年4月22日 10時) (レス) id: ee8bc6596a (このIDを非表示/違反報告)
とい(プロフ) - べるはちさん» コメントありがとうございます!続きを楽しみにしてくださっていて、とてもうれしいです。この続きも書きたいとは思っているので気長に…本当に気長に待っていただけたら…と思います。 (2023年4月22日 10時) (レス) id: ee8bc6596a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:とい | 作成日時:2023年2月6日 7時