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何度かインターホンを鳴らすと、「やぶぅ?」という声が聞こえ、ドアが開くと寝起き姿の伊野尾さんが立っていた。
ダボッとしたスウェットとズボンを着ていて、ところどころ寝癖がついている髪は相変わらずふわふわしている。
うわかっわい!
寝起きの伊野尾さんなんて本当に見てもいいのか?なにこれ夢?1回ほっぺたつねってもいい?
思わず出そうになった声を飲み込んでいる間に伊野尾さんの意識は覚醒してきたらしい。
「え……山田さん?」
「こ、こんにちは……」
薮さんの代わりに来ましたとしどろもどろに伝える俺に伊野尾さんは「あいつ…」と言いながらも「せっかく来てもらったのもあれなんで、入ります?」と開けてくれた。
「薮から聞いてると思いますけど今部屋ヤバいですよ」
「大丈夫ですそのために来ましたから」
「ほんとに汚いんで覚悟してくださいね」
どうぞと開いたドアに続いて失礼しますと入っていく。
まず目に入ったソファにはクリーニングのビニールに入ったままのシャツが何着も重なり、机の上には書類の山と開いたままのパソコン。積み重なったダンボールがあちこちにあり、ゴミ袋はペットボトルでいっぱいで、床には恐らく洗濯を後回しにしている靴下やTシャツが小さな山になっている。唯一スーツとネクタイだけは綺麗にハンガーにかけられていた。
本来は広い部屋のはずだがなんせ物が多い。でも一つ一つの家具はオシャレだし使われていないところは整頓されているので基本的には綺麗好きなんだろう。
「なんか想像と違いました」
「もっと汚かったってことですよね…」
「違いますって!綺麗の方ですよ!」
薮さんが言っていた意味がよく分かる、確かにこれは仕事と寝る以外していないだろうと思える部屋だ。
「伊野尾さんお仕事は?」
「昨日ようやく全部終わったんでさっきまで死んだように寝てました。これからやろうかと」
ふわぁとあくび混じりに答える顔は眠そうだ。
「俺やりますからゆっくりしててください。そのために来たんで」
「さすがにそこまでしてもらうのは悪いですって。じゃあ掃除は山田さんにお任せして俺は洗濯でもしようかな」
そう言って伊野尾さんは洗濯物の山を抱えて洗面所の方に消えていった。
本音はゆっくり休んでほしかったけどたしかに初めて家に来た人がうろちょろしてるのも落ち着かないだろうし。
「よし、やるぞ〜!」
気合いを入れる俺の声に反応するようにカーテンが揺れていた。
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とい(プロフ) - 雪音さん» コメントありがとうございます!指輪のところは一番書きたいところだったのでそう言っていただけてうれしいです! (2023年5月1日 11時) (レス) id: ee8bc6596a (このIDを非表示/違反報告)
雪音(プロフ) - 最後の指輪のところでめっちゃキュンキュンしました! (2023年4月28日 21時) (レス) @page19 id: 287eadd06c (このIDを非表示/違反報告)
べるはち(プロフ) - といさん» すごく好きなお話だったので思わずコメントしてしまいました!気長に待ってるので是非是非お願いします! (2023年4月23日 1時) (レス) id: 5fcad35e9b (このIDを非表示/違反報告)
とい(プロフ) - mai6943さん» 前回はコメントありがとうございました!大変遅れてしまいましたが、まだ読んでくださっていてうれしいです。なんとかくっつかせたいのでそうですね、気長に…(笑)、待っていただけたらと思います。 (2023年4月22日 10時) (レス) id: ee8bc6596a (このIDを非表示/違反報告)
とい(プロフ) - べるはちさん» コメントありがとうございます!続きを楽しみにしてくださっていて、とてもうれしいです。この続きも書きたいとは思っているので気長に…本当に気長に待っていただけたら…と思います。 (2023年4月22日 10時) (レス) id: ee8bc6596a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:とい | 作成日時:2023年2月6日 7時