第35話-観念 ページ37
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「──二人とも、卒業おめでとう!」
「ようやく卒業するんだな、清々するぜ」
いつも通り笑顔を浮かべた研ちゃんと、何故か不機嫌そうな顔をした陣平がこちらに向かってきた。
「祝ってくれて、ありがとな。せっかくの休日なのに、わざわざ来てくれて嬉しいぞ〜!」
丁度良い場所に陣平の頭があったので、俺はそれをわしゃわしゃと撫でた。
千速は戯れている俺達と軽口を交わし、暫くして友人達の元へと戻っていった。
千速の歩いていった方を何気なく見ていた俺の肩を、研ちゃんが軽く叩いた。
「・・・・・・ん、どうした?」
振り向いた先には、何か言いたそうな顔をした二人がいた。
「──Aちゃん、学ランの第二ボタン・・・・・・どうしたの?」
──俺の、第二ボタン。
「もしかして、・・・・・・誰かにあげたとか?」
確かに、俺の制服には五つあるはずのボタンが、一つだけ付いていなかった。
「さっき、取れたんだよ。こんな風に壊れたから」
俺は欠けたボタンをポケットから取り出してみせた。
「普通こんな壊れ方するか?」
「外れた時に足で踏ん付けた」
大分内容を省いてはいるが、嘘は言っていない。
「──壊れたから落としたのか?落としてから踏んで壊したのかよ?どっちにしろ、矛盾してんじゃねえか」
「・・・・・・言葉の綾だ。落としてから踏んで壊した」
「昨日まで取れそうな気配無かったじゃねーか。」
「もしかして、ボタンの事か?陣平、お前・・・・・・俺のことどんだけ観察してるんだよ」
「はあ?!ちっ、・・・・・・」
ボタンが取れている事には気が付いても、ボタンの外れ具合なんてものは、自分の制服ならまだしも普通の人は他人の制服を気にしもしないのではないだろうか。
──陣平が普通かと聞かれたら、即答は出来ないか。
「それに、お前は俺よりも身なりには気を付けてるタチだろ。卒業式なんて一大イベントを前に確認しないはずがねえ」
「そうそう。Aちゃんは俺達と違って、真面目さんだし・・・・・・ね?」
研ちゃんが笑顔で俺の方を見ていた。僅かに圧を感じるのは気のせいだろうか。
「──何故・・・・・・俺は詰められている?」
ドラマでよく観る探偵のような洞察力に観念した俺は、大人しく事の経緯を話す事にした。
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作者名:猫饅頭。 | 作成日時:2023年5月23日 3時