第33話-朧夢 ▼ ページ35
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「──っ、・・・・・・ッ!」
──誰だ・・・・・・?
誰かが何かを言っていた。
「・・・・・・」
「A、おいっ!・・・・・・馬鹿ッ!!オイッ!」
必死なその声の主を見上げた。
「──陣平・・・・・・、聞こえてるよ」
「ッ!!」
俺の反応が返ってきた事に、安堵の表情を浮かべた陣平だったが、次の瞬間には鋭い表情に変わっていた。
「ボケーッとしてんじゃねえ!つか、お前階段から落ちたらどうすんだよ」
「ああ、悪い」
陣平の腕に支えられる形で、学校の階段にいた。
「具合でも悪いのか?」
どうやら、俺は部活室の鍵を職員室へ返しに行った帰り、階段の途中で意識が飛んでしまっていたようだった。
「助けてくれてありがとう、陣平。体調はどこも問題ない。少し考え事してたみたいだ」
俺はもたれ掛かっていた陣平の腕から、ゆっくりと身体を起こした。
「してたみたいって、何だソレ。階段踏み外すくらいの悩みか?」
俺の返答に、陣平は眉を顰めた。
「考え事っていうか、夢?のようなものを見てた気がする・・・・・・多分」
「はあ?マジで寝てやがったのかよ」
陣平は呆れた表情で、俺の様子を伺っていた。
「あのさ、陣平」
「何だよ」
「腕、もう放して大丈夫だぞ?」
陣平の手が、俺の右腕をしっかりと掴んだままだ。
「断る」
陣平はそう言うと、俺の腕を軽く引いて階段を降り時始めた。
「こんなところで、また眠られたら困るからな」
「ええ?もう寝ないって、流石に」
「いつものお前は信用してるが、今のお前は信用しねえ」
結局俺は、陣平に腕を引かれたまま昇降口まで連れて行かれた。
そこには、陣平の事を待っていた研ちゃんが立っていた。
「おお〜、陣平ちゃん遅か・・・・・・って、なにかあった?」
俺たちの姿を確認すると、怪訝そうな顔で首を傾げていた。
「ああ、研ちゃん。待たせてごめんな。陣平がずっと手放してくれなくてさ」
「おい、誤解を招く言い方やめろ」
「へえ・・・・・・陣平ちゃんってば大胆〜っ」
研ちゃんが陣平を肘で突きながら、俺の顔を覗き込んだ。
「──それで、そうなったキッカケ教えてよ」
「別に大したことじゃ・・・・・・」
そう言いかけた俺の言葉を陣平が遮った。
「コイツが階段から落ちかけた」
そして俺は、二人に両腕を拘束された状態で家まで連行されることとなった。
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作者名:猫饅頭。 | 作成日時:2023年5月23日 3時