第31話-固めた決意 ページ33
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──泣かせてしまった･･････。
必死に涙を零さないようにする彼女の姿に、俺は心苦しくなった。
何という言葉を掛けようか思考を巡らせていると、彼女が自身の頬を軽く叩く音が響いた。
「──っ、ご、ごめんなさい。少し声を荒げちゃって」
普段、俺のような初対面の相手に涙を見せるような女性ではないのだろう。
「いえ、私の方こそ、まだこのお話をする時期ではなかったと思います。貴女の心情をもっと配慮すべきでした」
俺は己の返答欲しさに、無神経な発言で彼女を傷付けてしまったのだ。
「誠に申し訳ございませんでした！」
誠心誠意、俺は頭を下げて謝罪をした。
「えっ！ちょっと、やだ、頭を上げてよ。貴方は、ただ彼の事を思って、私に話をしに来てくれただけなんだから」
俺の反応に驚いた佐藤刑事は、先程まで滲んでいた涙がいつの間にか引っ込んでしまっていたようだった。
「とりえず、今のは忘れてちょうだい」
佐藤刑事は、手を口元に添えて咳払いをした。
「承知致しました」
「──あと、分かってると思うけど誰にも」
「ええ、他言は致しませんよ」
俺の返事に安心したのか、強張っていた口元が緩んでいた。
「──感謝するわ」
そういって笑みを浮かべた彼女は、高潔で清純な女性というに相応しかった。
──少し、千速に似ている気がする。
俺は佐藤刑事と、陣平の事について話をした。
一課へ配属された彼がどんな様子だったのか･･････どんな話をしたのか、俺の知らない陣平の話をしてくれた。
──そうか、彼女･･････。
彼女の口から紡ぎ出される言葉は、上司と部下の関係だけとは思えない程に、それは深く優しいものだった。
──良い人と出会えていたんだな、陣平。
曇りのない彼女の瞳に、陣平も惹かれていたのだろうか。
「何？私の顔に何か付いてる？」
「──佐藤刑事、俺は貴女という人に出会えて良かった」
「そういってもらえて、光栄だわ」
──俺に出来ることは、尽力を尽くす事だ。
「事件の解決に、俺の力が少しでも役に立つ時は、いつでもご連絡下さい」
「──ええ、･･････犯人を、必ず捕まえましょう」
──もう、誰も失わないように。
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作者名：猫饅頭。 | 作成日時：2023年5月23日 3時
