第24話-無力と喪失 ページ26
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事件から数日間のことは、あまり覚えていない。
間近で爆発を受けた研ちゃんの遺体は、損傷が酷く、ご家族への配慮により最後まで会うことは叶わなかった。
葬儀では、友人、仕事の関係者をはじめ、多くの人達が参列し、研ちゃんの死を弔っていた。
いつも気が強い千速が、泣き崩れている姿を、ただ側で見ている事しか出来なかった。
俺は、何も出来なかった。
「おい、・・・・・・!Aっ!」
「──ッ、陣平・・・・・・?」
陣平に肩を強く揺さぶられ、俺はしばらくの間自宅の前で立ち尽くしていたことに気付いた。
「ぼーっと突っ立てんじゃねーよ。不審者かテメエ」
片手にコンビニの袋を持った陣平が、隣に立っていた。
「悪い、何か俺に用があったか?・・・・・・いや、あるから此処に来たんだよな。少し待っててくれ、直ぐに鍵を出す・・・・・・」
俺はバッグからキーケースを取り出したが、陣平の方が早く合鍵で開けていた。
「入れよ、早く」
陣平に背中を押される形で、俺は部屋に入った。
陣平は靴を脱ぎ捨てると、壁に付いた電気のスイッチを押して明かりをつけた。
「お茶でも淹れるよ、陣平は──」
俺が言いかけた言葉を、陣平は遮った。
「そこ座れよ、A。話しておきたい事がある」
ベッドに腰を掛けた陣平と向かい合う様に、俺は座布団に座った。
「それで、俺に話したい事って?」
「──萩の事だ。お前、あの日の事ずっと様子が変だろうが」
陣平はわざわざ俺の様子を見に、此処まで来てくれたらしい。
「そう、か・・・・・・。陣平に心配掛けちまうなんて、情けないな」
「情けなくなんてねぇよ、お前は」
力強い陣平のその言葉に、俺は目頭が熱くなった。
「・・・・・・自分の中で、ちゃんと整理が付いてないんだ。あの日、俺も何か出来たんじゃないかって、研ちゃんがあんな事にならなかったかもしれないって・・・・・・思っちまうんだ」
そんな俺に陣平は追い討ちを掛けていった。
「Aが居たとしても、何の役にも立たなかっただろうよ」
「容赦無いな、陣平。全く・・・・・・反論の余地もない」
「ああ、ねぇだろうよ」
「・・・・・・だな」
陣平の言う通り、爆発物が目の前にあったとしても、解体に協力するどころか、邪魔にしかならないだろう。
「──だから、俺が取るんだよ。お前の代わりに」
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作者名:猫饅頭。 | 作成日時:2023年5月23日 3時