第23話-不幸の始まり ページ25
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「嘘、だろ・・・・・・」
携帯から聞こえてきたその言葉に、俺は自分の耳を疑った。
嘘であって欲しいという俺の願望とは裏腹に、続けて発せられるのは非情な現実だった。
「──萩は死んだ。・・・・・・今日の爆発に巻き込まれて、跡形もねえ」
そう告げた陣平の声は、酷く震えていた。
──何かの間違いかもしれないじゃないか。
機動隊が出動していたからといって、爆発物処理班には研ちゃんだけじゃない、他にも人員がいる。
「ッ、跡形もないなら・・・・・・研ちゃんじゃない事だって」
俺は何を言っているのだろうか、勝手に口が動いていた。
「──っ、電話で話したんだよッ!萩原と、俺はッ・・・・・・!!アイツはあの場所に居たんだッ!」
「そ、んな・・・・・・ッ」
マンションに仕掛けられたという爆弾が爆発してから、すでに数時間が経過していた。
「これからのことについては、千速から連絡があるだろうよ。・・・・・・じゃあな」
陣平は一方的にそう言い放ち、電話を切った。
「・・・・・・」
通報を受けたあの時、俺が現場に駆け付けていたら何かが変わったのだろうか。・・・・・・変えられたのだろうか。
「はは、っははッ・・・・・・俺に何が出来たんだよッ、くそっ、クソッ!!」
何の能力もない俺が行ったところで、ただの野次馬程度の事しか出来なかった。
──何が、『あの人みたいに守る』だよ・・・・・・。
「守れて、ないじゃないかッ!」
机に叩きつけた拳が、激しい音を立てた。
「梅川部長、手が・・・・・・」
「──ッ、すまない・・・・・・驚かせてしまって、本当に、申し訳なかった」
静まり返る中、俺は頭を深く下げて全員に謝罪した。
「梅川君」
そんな中、俺の肩に手が置かれた。
「澤田先輩・・・・・・」
澤田先輩は、俺の勤務当初に世話係をしてくれていた人だ。
「梅川君、今日はもう帰って休みなさい。この腫れた手も、きちんと氷袋で冷やしておくんだ」
添えられた氷袋が手に当たって初めて、自分の手が酷く腫れていることに気が付いた。
「・・・・・・分かりました、迷惑をお掛けして申し訳ありません」
「気にするな、上には状況を説明しておくから」
そっと背中を叩いてくれた先輩の気遣いが、周囲の人達の優しさが・・・・・・深い有り難さを感じるのと同時に、己の不甲斐無さを痛感した。
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作者名:猫饅頭。 | 作成日時:2023年5月23日 3時