第20話-充実した日常 ページ22
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コップ一杯に注いだお酒を片手に、俺は声を上げた。
「──陣平、研ちゃんの警察学校卒業を祝して〜!乾杯ッ!!」
「かんぱ〜いッ」
「ん」
ガラスのコップが交わり、小さな音を立てた。
「いや〜、嬉しいな。二人とも俺と配属部署は違うが、これからも警察官としてお互い頑張ろうぜ!」
「うわー熱いね〜、いつもに増して熱さが凄いよ、Aちゃん」
俺は研ちゃんの肩に腕を回し、コップに入った焼酎を飲んでいた。
「ったく、暑苦しい奴だぜ。とんだ酔っ払いジジイだぜ」
陣平はテーブルに置かれた酒のつまみを、一人で食べていた。
「──なんだと陣平っ、と言いたいところだが・・・・・・良いぜ?俺はもう大人だからな、可愛い後輩の軽口は受け止めてやるさ」
「なっ!」
反論の代わりに、俺は陣平の頭を思いっきり撫でてやった。
「陣平の髪はふわふわだな〜。撫で甲斐のある頭だ」
「勝手に撫でんなっ!俺はもうガキじゃねえんだぞっ」
怒った陣平から手を掴まれた俺は、その言いたげな瞳を見据えて言った。
「──知ってるよ、陣平。お前はもう立派な大人だ」
「・・・・・・分かってんなら、ガキ扱いすんな。ムカつく」
「そうだよな。怒らせるつもりはなかった、すまない」
彼らはもう、大人なのだ。今までと同じ様に接するのは、二人に失礼だろう。
「・・・・・・別に、怒っちゃいねえけどよ」
陣平は俺から視線を逸らした。
「俺も治さないとな、こういう癖。陣平も好きな子にされるならまだしも、男の俺にされても嬉しくないよな」
「──んなこと言ってねーだろっ!俺はガキみてーに扱うなってだけで、治せなんて一言も」
「そうなのか?てっきり嫌がってたのかと・・・・・・」
流石に俺も今回ばかりは、撫でられるのを本気で嫌がってると思っていた。
「本気で嫌なら、今頃ぶん殴ってるぜ。・・・・・・どうしてもっていうなら、少しだけなら撫でられてやってもいい」
陣平に掴かまれていた手が自由になり、俺はもう一度だけ触れることを許されたその頭に手を差し伸べ、優しく撫でた。
「ありがとうな、陣平」
照れているのか、酒の所為なのか定かではないが、陣平の頬が微かに赤くなっていた。
「えーと・・・・・・二人とも、俺のこと忘れてない?」
研ちゃんが俺達の間に入ってきた。
「独り占めするなよ、陣平ちゃん」
「っ・・・・・・んなことしてねー!」
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作者名:猫饅頭。 | 作成日時:2023年5月23日 3時