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第17話-第二ボタン ページ19

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「──二人とも、卒業おめでとう!」


「ようやく卒業するんだな、清々するぜ」


 いつも通り笑顔を浮かべた研ちゃんと、何故か不機嫌そうな顔をした陣平がこちらに向かってきた。



「祝ってくれて、ありがとな。せっかくの休日なのに、わざわざ来てくれて嬉しいぞ〜!」


 丁度良い場所に陣平の頭があったので、俺はそれをわしゃわしゃと撫でた。


「おいッテメー、やめろバカっ!」


「いいな〜、陣平ちゃん。──ねえ、Aちゃん、俺は?」


「ああ、いいぞ〜」


 俺は空いている手の方で、軽くかかんだ研ちゃんの頭も同じように撫でた。


「Aはモテモテだな。こうも弟達に懐かれているのを見ていると、同じ歳上として少し妬けるぞ」


 その千速の言葉に、陣平が即刻否定した。



「はあ?!懐いてねえっ!」


「ええ〜姉ちゃん、本人の前で言うなんて照れるだろ〜。なあ、陣平ちゃん?」


「同意を求めんじゃねえッ!」


「陣平」


 俺が名前を呼ぶと、陣平の動きが止まった。


「な、何だよ・・・・・・」


「お前の言い分は分かった。・・・・・・ちなみに、俺は陣平が懐いてくれてると思ってる」


「全く話聞く気ねえじゃねえか」



 そんな俺達の様子を見て、千速は腹を抱えて笑っていた。


「いや、仲が良い事はいい事だ。・・・・・・弟達の相手は任せたぞ」


 千速はそう言い残すと、自分を呼び戻しに来た友人達の和の中帰って行った。



 すると、俺の方をじっと見つめてくる視線に気が付いた。



「どうしたんだよ、二人して・・・・・・。俺に何か付いてるか?」


「付いているかというより、寧ろ付いていない事が問題っていうか・・・・・・」


 相変わらず無言のままこちらを見ている陣平と、聞きたい事があるという研ちゃんの言葉に、俺は耳を傾けた。


「Aちゃん、学ランの第二ボタン・・・・・・どうしたの?」


 確かに、俺の制服には五つあるはずのボタンが、一つだけ付いていなかった。


「もしかして、・・・・・・誰かにあげたとか?」


 何故か研ちゃんの声音が、僅かな緊張感を帯びている様な気がした。


「そんな事が気になるのか?」


「気になるよ、少なくとも俺はね」


 陣平の視線も、俺のボタンの方を見ているような気がした。


「うーん、一言でいうなら?・・・・・・取られた、だな」


「「誰に!?」」



「・・・・・・どうして、そんなに食い気味なんだ」




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作者名:猫饅頭。 | 作成日時:2023年5月23日 3時

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