第12話-最後の出来心 ページ14
**
「梅ちゃんって、高校卒業したら警察学校行くんだろ?そしたら、もう髪とか染められなくね?」
ある日唐突に部活の先輩から、そんな事を言われた。
「・・・・・・確かに」
高2の夏休み、羽目を外せる最初で最後の機会じゃないかと思い立った俺は、つい先程薬局で購入したブリーチを片手に床へ座り込んでいた。
「何事も経験、度胸だよな」
──ちゃんと黒染めも買ってあるし、夏休みの間なら問題はないだろ。
髪を染めようと思ったきっかけは、単純な好奇心だけであり、決して反抗期だからという訳でもなかった。
「これを塗ればいいんだよな、うわー・・・・・・臭い凄いな」
俺はクリーム状のそれを、クシやハケを使って満遍なく塗っていった。
「──よし、で・・・・・・後30分くらい置いてたらいいのか」
今日から両親はそれぞれが持っている部活の合宿が始まるらしく、家には俺しかいなかった。
──別に、それを狙ってたんじゃないけどさ。
真面目な両親には、実のところ申し訳なさを感じていた。
──最初で最後だから、大目に見て欲しい・・・・・・けど無理だよな、多分。
一目見た瞬間に、卒倒しそうだ。
「──誰だ、・・・・・・てめえ」
「酷い言い草だな、陣平」
髪を染めた翌日、俺を見るなり陣平はそう言い捨てた。
「何でんな派手髪に染めてんだよ、気でも狂ったか?」
「狂ってねーよ、好奇心だよただの」
「はああ?好奇心??──正直に言うが、全然似合ってねえぞ」
「おい、コラ・・・・・・陣平ッお前なあ」
「──そこのお二人方、騒がしいなぁ」
玄関先で俺達が言い合いをしていると、いつの間にか研ちゃんが家から出てきていた。
「・・・・・・って──うおっ、一瞬誰かと思った・・・・・・Aちゃんか!?」
研ちゃんが俺を見て、目を丸くさせた。
「見ろよ、萩!コイツが頭金髪にして・・・・・・ってピアスも開けてんのか??」
「ああ、開けた」
珍しく俺が通う高校は公立の割に、校則が厳しくない為、夏休み中の染髪やピアス着用に関して容認されていた。
「開けた、じゃねえよ!そんな軽いノリで耳に穴開けんのかよ」
「別に、意外と平気だったぞ」
「ええ、でも本当にどうしたの?急に反抗期でもきた?Aちゃん」
「・・・・・・二人して、俺を何だと思ってるんだよ」
俺は清廉潔白な聖人でも、大真面目人間でもない。
**
98人がお気に入り
「名探偵コナン」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:猫饅頭。 | 作成日時:2023年5月23日 3時