第10話-思春期の悩み ページ12
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俺と千速が高校生になってからも、陣平や研ちゃんとは毎朝のように会っていた。
玄関から顔を出すと、いつもの時間に研ちゃんが家の前で待っていた。
「Aちゃん、おはよう」
「おう、研ちゃん!おはよーさん、──ってあれ、陣平は?」
千速は部活の朝練に行っている日だが、陣平はたまに深夜まで何かを解体していて寝過ごすことも度々あった。
「いやー、陣平ちゃんなら朝早くから走り込みしに行ってるよ」
「へえ、走り込みか・・・・・・朝から感心だな」
俺も体力作りに走り込もうかと思考を巡らせていると、研ちゃんが口を開いた。
「──なあ、Aちゃん」
「ん、どうした?」
「前に将来の夢が警察って言ってたでしょ?」
「ああ、言ったな」
「考え直す気はない?」
「全くない」
歩を進めながら俺が即答すると、研ちゃんは予想通りな反応だと言わんばかりの様子で俺を見た。
「だよな〜、・・・・・・姉ちゃんもAちゃんも意志強いというか、石頭というかなぁ・・・・・・」
「褒め言葉として受け取っておくよ」
「ははっポジティブだね〜。まあそこがAちゃんの良い所だし、俺は好きだけど」
研ちゃんは整った顔をふっと緩ませた。
──やっぱり、兄弟揃って美形だな・・・・・・。
優しい声音といい、この顔で微笑まれたら女の子達はイチコロだろう。
「研ちゃん、ありがとな。俺も二人が心配してくれているのは分かってる」
「──うん」
「──でも、あの事件で警察に助けてもらってさ・・・・・・あの人みたいになれたらって思ったし、警察官になったらもっと色んな人を、お前達を守れるだろ?」
「そうだね、Aちゃんは警察向いてるよ。・・・・・・でも困るな〜、Aちゃんが警察になるの」
「えッ、どうしてだ??」
研ちゃんは笑顔のまま、俺を見つめて言った。
「そりゃあ、取り締まられたくなるから?」
「研ちゃんよ、・・・・・・そういうのは、女性警官に言うやつだぞ?」
「まあ女性警察官ってのも捨て難いけど、俺はAちゃんがいいな」
取り締まられたいという気持ちは全く理解できないが、俺がいいと・・・・・・そう言われるのは悪い気はしない。
「そんな機会がないのを願ってるよ。──それじゃ、またな〜」
別れ際、小さな声で研ちゃんは何かを呟いた。
「・・・・・・深読みしてくれたっていいのになぁ」
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作者名:猫饅頭。 | 作成日時:2023年5月23日 3時