第8話-Side:ウォッカ ページ49
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仕事を終えて、兄貴とルシアンが待機していた部屋まで迎えにいったあの時、そこには異様な緊張感が漂っていた。
──ルシアン、また何をやらかしたんだ。
無傷で訓練施設を出て来たはずのルシアンの首元には、絞められたかのような跡が出来ていた。
『っ、ウォッカ・・・・・・!』
ルシアンは俺の顔を見るなり、安心したような、嬉しそうな表情を浮かべていた。
そんな奴が、不憫に思えて・・・・・・つい構ってしまっていたのだ。
来た時と同じ様に、潜水艦へ乗り込んだ俺達は、日本に着くまでの間、各自自由に過ごしていた。
「おい、ルシアン。入るぞ」
部屋の扉を開けると、ルシアンはベッドに腰を掛けていた。
「ウォッカ、どうしたの?」
俺は手に持っていた救急箱を、奴の隣に置いた。
「酷くなる前に、手当しておけ」
「・・・・・・ウォッカは心配症だな、俺は平気なのに」
「馬鹿か?心配なんてしてねえ。仕事に支障が出たら、こっちが迷惑するんだ」
「ぅわっ」
俺は傷を隠そうとするルシアンの腕を掴み、湿布を貼り付けた。
「俺に・・・・・・優しくしたら、またジンが──いッゥ」
火傷をしている腕に、軟膏を塗布した絆創膏を叩き付けた。
「お前が俺の事を気遣うなんて、十年早え」
「十年なんて、あっという間だよ。ウォッカ」
そういって、じっと見上げるルシアンと視線が交わった。
「・・・・・・俺、ウォッカの面倒見が良いところ、好きだよ」
甘えるような、そんなルシアンから向けられた瞳、俺は無性に落ち着かない気分になった。
「はあ?お、お前馬鹿言ってんじゃねえぞっ」
ルシアンは俺の服の裾を軽く掴み、照れ臭そうな表情で小さく口を開いた。
「──さっきも、チョコくれたし」
「お前、大丈夫か?餌付けられて付いていく野良猫かよ??テメーは・・・・・・」
食に対して執着心のあるコイツのことだ、いつかそれに釣られて痛い目に合うんじゃないかと思えてきた。
「知らない奴に付いて行くなよ」
「・・・・・・俺、小学生か何かだと思われてる?」
「さあな」
──そんなこと、俺の方が知りてえよ。
お前にどんな感情を持っているのか、自分ですら分からないのだ。
幼い頃から面倒を見てきたが故の『親心』か、拾ったペットに向ける『愛着心』か、『責任感』か・・・・・・。
それだけのようで、それだけではない気がする。
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猫饅頭。(プロフ) - 夢子さん» コメントありがとうございます!かっこいいジンニキと言って頂けて嬉しいです。。。応援ありがとうございます!! (2023年5月11日 19時) (レス) id: 72178cca42 (このIDを非表示/違反報告)
夢子(プロフ) - ジンニキかっこよきでした。更新楽しみにしてます‼︎ (2023年5月10日 23時) (レス) @page6 id: 913dff5ce5 (このIDを非表示/違反報告)
猫饅頭。(プロフ) - 夜鷹紫苑さん» ウォッカは、懐に入った人間には優しくしてくれるという解釈(偏見)です。それ以外の人間には、ジン同様非人道的であって欲しいと個人的には願っています。。 (2023年5月9日 22時) (レス) id: 72178cca42 (このIDを非表示/違反報告)
夜鷹紫苑 - え?優しすぎませんすか? (2023年5月7日 0時) (レス) id: ec66583caa (このIDを非表示/違反報告)
猫饅頭。(プロフ) - 夜鷹紫苑さん» コメントありがとうございます!ウォッカのお手製おにぎり、美味しそうですよね...。その人の好みによって具材とか味付けを変えてくれそうです。。 (2023年5月6日 21時) (レス) id: 72178cca42 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:猫饅頭。 | 作成日時:2023年5月1日 12時