第8話-Side:ジン ページ48
＊＊
ウォッカが運転する車は、海辺へ向かって静寂に包まれた郊外を走っていた。
「･･････」
バックミラーには、後部座席に座るルシアンの姿が映っている。
──チッ、ウォッカの野郎か。
俺の煙草の匂いに混じり、微かに甘いカカオの香りがした。
──飽きもせず、コイツを甘やかしやがったな。
俺の視線を感じたのか、ルシアンは顔を上げた。
「っ･･････」
長い前髪の隙間から碧眼の瞳が、俺の様子を伺っていた。
何度も恐怖の色に染め上げてきたその瞳は、俺の仕草一つで揺れ動く。
首元には絞めた時の跡、腕には煙草を押し付けた時に付けた火傷の跡は、俺の所有物であるという事を再確認させる為の印だ。
──何奴も此奴も目障り極まりねえ。
この胸糞の悪さが消えないのは、間違いなくルシアンの所為だ。
「──ッ、ええー･･････」
苛立ちを募らせていく俺の隣で、ウォッカが話を振ってきた。
「そういえば兄貴、例の資料が日本に届いたようですぜ」
「ああ、帰ったら確認する。──あの方への報告は、事実確認が取れてから行う」
研究所から、新薬に関する重要書類が届く手筈になっていた。
「──あの女の状況はどうなっている」
運転席に視線を向けると、ウォッカは少し間を置いて口を開いた。
「シェリーの事ですかい？あの女は、未だ変わらず黙り込んでいるようですぜ」
「フンッ、強情な野郎だ。死にたがりの人間に、脅しは通用しねえということか」
奴には組織に従わざるを得ない、新たな脅しの材料が必要というわけだ。
──もっと賢い女だと思っていたが、どうやら見当違いだったようだな･･････シェリー。
このまま組織に刃向かう気ならば、処分する事も視野に入れておくべきだ。
俺は再びバックミラーに視線を戻し、奴を見据えた。
「──ルシアン、貴様に新しい仕事だ」
「新しい仕事？」
コイツの容姿の良さは、ベルモットからのお墨付きだ。
「詳しい内容は、帰国後にベルモットから話がある」
「そう、ベルモットから･･････オーケイ。心得ておくよ」
ルシアンは俺から目線を外し、窓の外を向いた。
──ハッ、腰抜けが。
奴に関しては、刃向かう度胸すら持ち合わせていない。
──弱者は、黙って奪われていろ。
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猫饅頭。(プロフ) - 夢子さん» コメントありがとうございます！かっこいいジンニキと言って頂けて嬉しいです｡｡。応援ありがとうございます！！ (2023年5月11日 19時) (
レス) id: 72178cca42 (このIDを非表示/違反報告)
夢子(プロフ) - ジンニキかっこよきでした。更新楽しみにしてます‼︎ (2023年5月10日 23時) (レス) @page6 id: 913dff5ce5 (このIDを非表示/違反報告)
猫饅頭。(プロフ) - 夜鷹紫苑さん» ウォッカは、懐に入った人間には優しくしてくれるという解釈(偏見)です。それ以外の人間には、ジン同様非人道的であって欲しいと個人的には願っています｡｡ (2023年5月9日 22時) (レス) id: 72178cca42 (このIDを非表示/違反報告)
夜鷹紫苑 - え?優しすぎませんすか? (2023年5月7日 0時) (レス) id: ec66583caa (このIDを非表示/違反報告)
猫饅頭。(プロフ) - 夜鷹紫苑さん» コメントありがとうございます！ウォッカのお手製おにぎり、美味しそうですよね...。その人の好みによって具材とか味付けを変えてくれそうです｡｡ (2023年5月6日 21時) (レス) id: 72178cca42 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：猫饅頭。 | 作成日時：2023年5月1日 12時
