第32話-蒼い記憶と共に ページ34
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「──相棒、俺の片腕は使いモノにならねえ・・・・・・」
固定された包帯塗れの右腕を眺めながら、俺は自嘲気味に呟いた。
「そうだな、お前の右腕は全く使いモノにならねえ・・・・・・だがな──」
相棒は鋭い声で吐き捨てると、俺の腕を掴んだ。
「──まだ左腕があるだろ・・・・・・。その左腕、貸してくれるんだろ?」
「──っ・・・・・・!!」
「──足りねえ分は、俺が持ってるから問題ねえ・・・・・・。──だから、お前は大人しく俺の左腕になれ!」
──何だよ・・・・・・それ・・・・・・。
「──ははっ、なれって・・・・・・命令形かい」
ピンガは良くも悪くも正直なのだ。
「──っあー・・・・・・、っ・・・・・・俺の降参だ!!相棒の希望通り、左腕もくれてやるし、船も手配してやる・・・・・・」
だから、決してお世辞なんてモノではないのだ。
──最初から、この選択肢しかないじゃないか。
「──その代わり、ジンの野郎の息の根を止めるのは俺だ・・・・・・これは相棒と言えど絶対に譲らねえぜ?」
「ハッ、俺だって譲らねえよッ!──俺があの野郎を終わらせてやる・・・・・・!!!」
差し出した俺の左手の拳と、相棒の拳が力強く触れた。
「──準備はできたか?相棒」
「ああ、出来てる。お前はどうなんだ?」
「勿論、・・・・・・覚悟も出来てるよ」
建物の外から、船のエンジン音が聞こえてきた。
「短い間だったけど、相棒と無人島生活は楽しかったぜ」
「・・・・・・まあ、悪くはなかった」
相棒はコーンローの髪を小さく揺らした。
「そりゃ良かった。・・・・・・次の目的地は、地獄だぜ!」
「──フッ・・・・・・、望むところだ!」
未だ朝日が差していない薄暗い浜辺に出ると、マスターが出迎えた。
「──A様、ピンガ様・・・・・・お迎えに上がりました」
「おはよう、マスター。朝っぱらから俺の為に駆け付けてくれて、ありがとう・・・・・・」
「──いえ、私はこのくらいしか出来ませんので・・・・・・」
俺達が彼の船に乗り込むと、船は静かな海の上で動き始めた。
「──地獄の果てまで側にいろ・・・・・・相棒」
ピンガは俺の瞳を見つめて、不適な顔で微笑んだ。
【完】
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作者名:猫饅頭。 | 作成日時:2023年4月29日 2時