第31話-消したいモノ ページ33
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「・・・・・・お前の利き腕を奪った挙句、助けてもらったのに恩知らずな頼みだと分かってる。──だが、Aにしか頼めねえ・・・・・・」
相棒がこんなに改まって俺に頼みごとをするなんて、今までだってなかった。いや・・・・・・これから先もないだろう。
「──はは・・・・・・本当に、・・・・・・許せねえ、──酷いぜ・・・・・・相棒」
命を張って助けて、利き腕失って、目覚めたピンガは記憶喪失になっいて・・・・・・。
「記憶を取り戻したきっかけが、あの男なのも本当に気に食わねえ・・・・・・」
記憶を取り戻したかと思えば、相棒の事なんて忘れて・・・・・・
「そんで・・・・・・取り戻した最初の頼みが、復讐の手助けなんてよ・・・・・・」
傍若無人で冷徹で、裏切者だろうが、仲間だろうが、いとも簡単に見捨てる血も涙もない冷血漢・・・・・・ジンという名のあの男が生きている限り、相棒はあの男の呪縛から逃れられない。
──ああ、やっぱり・・・・・・この世から消さねぇといけないんだよな。
相棒を解放するために・・・・・・俺が解放されるために、あの男だけはこの手で消さなくてはいけない。
「ああ、最低な頼みだと俺も理解はしてる」
相棒は変わらず俺の事を見据えていた。
「・・・・・・相棒は忘れちまってるかもしれないが、俺はずっとジンの事が気に食わなかったんだ。相棒の対抗心を燃やさせていたあの野郎の事が、心底憎いんだぜ?それに、この瞬間だって、会話の内容になってるのが最高に不快でしかたがねえ・・・・・・」
「ああ・・・・・・」
「正直相棒の記憶が戻らずに、このまま無人島で暮らすのもアリだと思ってたし、・・・・・・俺の事も思い出さずにくたばったって、それはそれで幸せだったんじゃないかって思ってる」
──でも、俺は知っている。
相棒がこんな島で大人しくくたばってくれるような人間ではないということを・・・・・・相棒である俺が一番知っている。
「──出会った時から、変わらねえな・・・・・・ピンガは」
豹の様にしなやかで、気高くて、美しくて、己の欲望に忠実で、人の気持ちなんてお構いなしで、自由に生きているその姿に・・・・・・俺は惹かれて仕方がないのだ。
「そんなの・・・・・・俺じゃあ、捕まえられねえよ・・・・・・」
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作者名:猫饅頭。 | 作成日時:2023年4月29日 2時