蒼い記憶は深海に消える。【完】 (ページ31)

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第29話-失っていた記憶ページ31

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「──戻ったって、記憶が戻ったってのかよ」

「──ああ･･････、組織の時の記憶も戻った。俺たちをこんな目に遭わせやがった野郎のこともな･･････」

「･･････っ！？」

　ピンガの足元には、ガラス瓶──『ＧＩＮ』とロゴが入った酒瓶が転がっていた。

──よりにもよって、きっかけがコレ、かよ･･････。

　ピンガにとって、コイツは消したくても消えない記憶らしい。

「──それで、そのクソ野郎を思い出して、俺の事も思い出してくれたのか？」

「ああ、組織の仕事で組んでた有能な相棒ってことだろ？ちゃんと、思い出してる」

「･･････そうだな、俺達は相棒だ。それ以外で、何か思い出したことは？」

　相棒は、思い出した記憶を断片的に話していく。

　組織でのし上がるためにラムに取り入ったこと、今回の任務でパシフィックブイに潜入していたこと、その脱出の過程で組織･･････ジンに裏切られたこと、俺が海底まで助けに来たこと･･････記憶が徐々に繋がっていった。

「俺たちがこんな場所に居るのは、あの野郎が裏切りやがったせいだ･･････ッ！！」

　そして次第に、以前のような鋭い光を放った瞳を取り戻してきていた。

「･･････」

　けれど、きっとその瞳の中に俺の姿は映ってなどいないのだろう。

「──お前のその右腕も、･･････俺を助けた時に負ったんだろ？」

　相棒は俺の右腕に視線を落とし、綺麗に整った顔を歪めさせていた。

「この傷は、勲章みたいなモンだって。──それに、ピンガの命を救えるなら･･････腕の一本、骨の何本引き換えにしたって安いぜ？」

「お前は、それでいいのかよ･･････。利き腕使いモンじゃなくなっていうのによ」

　自己犠牲なんて柄にもないが、相棒の為･･････俺の目的の為なら命を張るくらいの覚悟は持ち合わせているだけの話だ。

「さすがに右腕はまともに使えそうにないけどな。･･････まあ、俺は意外と器用だからな、左腕なら貸してやれると思うぜ」

　俺がいつもの通り軽い口調で返すと、相棒は呆れたような顔で『馬鹿なやつだ』と呟いていた。

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