蒼い記憶は深海に消える。【完】 (ページ29)

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第27話-孤島生活③ ページ29

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「──記憶が無くなる前の俺は、どんな人間だったんだ？」

　暇つぶしに本棚に置かれていた本を読んでいると、ピンガが話しかけてきた。

「ん～、今の相棒も前の相棒も･･････美しいよ？」

「はぐらかすなよ、具体的に言ってくれ」

「髪はコーンローにして、その辺の女たち以上にいつも美容に気遣ってた」

　今の相棒はコーンローが解け、腰くらいまでの髪を俺と同じように後ろで纏めていた。

「･･････それで？」

「俺はいつも相棒に感心してたよ。──誰よりも･･････意識が高くて、気高くて、美しくて、強気で向上心があった･･････心底見惚れるくらいにさ」

「ふーん･･････」

　俺は柄にもなく、感傷的になり過ぎているのに気が付いて、冗談めかした口調で相棒をからかうことにした。

「そんな過去のことなんて、特段気にしなくていいだろ？」

　俺は腑に落ちないような顔をした相棒の肩に触れて、そっと耳元で呟いてみた。

「──ふっ･･････それとも、前の相棒との親密な関係が気になってんの？？･･････って、なんてわけねぇ──ッえ･･････っ？！」

　急に身体が後ろに傾くと、俺はそのままベッドに無様に倒れこんだ。そして、次の瞬間には、その上んび覆いかぶさるような形で相棒が俺の左腕を軽く抑えていた。

「──気になるって、そういったらどうする？」

「い、いや、冗談だよな？･･････相棒が、こんな冗談言うなんて珍しいけど」

「へー、前の俺は冗談言わない男だったのか？ちなみに、俺も冗談を言わない」

「う、嘘だ･･････っ！」

　予想外の相棒の言葉に加えて、唯一動かせる左腕を拘束されていることから、俺は想像以上に焦っていた。

「･･････」

　黙ったままお互いの顔の距離が近づいてくるような気がして、･･････いや、確実に近づいてきていた。

「まッ･･････相棒ちょっ、と一旦待ってくれ！さっきの、俺が悪かったって！冗談が過ぎて･･････」

　抵抗するが軽く受け流され、ゆっくりと距離が縮まっていく。

──どうしよう、いやまあ正直嬉しいけども！？──なんか罪悪感がすげえよ･･････。

　狼狽え葛藤している俺を見て、相棒は肩を震わせ始めた。

「──相棒、やったな･･････？」

「ははッ、面白れぇ～！今までのお返しだ、お互い様だろ？」

「いい性格してんな･･････本当に」

「どーも」

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