蒼い記憶は深海に消える。【完】 (ページ28)

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第26話-孤島生活② ページ28

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「･･････、･･････はぁ、無理だ」

　孤島生活が始まって数日、俺は片腕が使えない不便さに苛立ちを感じ始めていた。

──上手く纏められねえ･･････。

　先程から長い後ろ髪を纏めるために、海辺で拾った棒切れを使っているのだが全く上手くいかない。

──流しておくには長いし･･････切るか？

　相棒を真似て髪を伸ばしていたのだが、万が一何か起きた時に邪魔になるのは本意ではない。

──結構気に入ってたんだけど、仕方ねえか･･････。

　俺が机の上に置かれていたハサミで髪を切ろうとしたその時、朝食を準備していた相棒に声を掛けられた。
　

「･･････待てよ。その髪──本当に切んのか？」

　相棒は俺の髪をじっと見つめていた。

「ああ、この通り利き手が使えないんでな。この長さだと、纏めないと邪魔になるだろ？──今の俺じゃ、自分で髪も結えないからな･･････」

　そういって再び髪の毛にハサミを入れようとする俺の腕を、近づいてきた相棒が掴んでいた。

「──貸せ、俺がやる」

「えっ、なに〜？相棒がしてくれんの？良い感じにしてくれよ」

　相棒は俺の手からハサミを受け取ると、俺の後ろへと回った。

　相棒の指が俺の髪に触れて、軽く髪を梳いていた。

──相棒に髪切って貰えるなんて、光栄な事だよなぁ。

　どんな髪型になっても、すぐに伸びてくるだろう･･････そんな事を考えながら相棒の動きを待っていた。

「･･････」

　けれど、一向にハサミの音は聞こえてこない。

「相棒？あれ、･･････ん？？」

　それどころか、髪が少しずつ結われているような気がした。

「オイ･･････！動くなよ、せっかく上手く纏めてんだ」

　後ろを振り返ろうとした俺の頭を相棒が小突いた。

「え、ええ？！切ってくれるんじゃないの？？」

「はあ？誰がそんな事言ったんだよ。それに･･････記憶は無いが、人の髪の毛なんて･･････多分切った事ないだろ」

　相棒はそうこうしている間に、俺の拾ってきた棒を器用に使って一つにまとめていった。

「──未経験でも良かったのに。別に失敗しても怒んないし」

「嫌だね、俺がしたいようにするだけだ」

「はは、主張強い･･････」

「･･････理解したなら、大人しく朝食食べてろ」

「･･････はーい」

　癖になってしまったらどうするつもりなんだろうか。

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