第23話-忘却 ページ25
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「──何だよ･･････、本当に俺の事覚えてないのか？」
海に浸かっていることも忘れて、俺は隣の相棒に問い掛けた。
「ああ、覚えてない。──というか正直、自分の名前も思い出せないからな･･････」
「ははっ、んじゃ、記憶喪失ってことか？･･････何があってこうなったのかも、･･････俺とお前の関係も何もかも分からないのか？」
「分からねえ･･････」
解けたコーンロウの髪が風に揺らされて、困惑している相棒の顔を覆った。
「──っ･･････！」
相棒の言葉にショックを受けながらも、俺の脳内では、思考が駆け巡っていた。
「･･････」
──でも、これってチャンスとも言えるよな。
この瞬間に相棒の記憶があったのなら、確実と言っていい程、こんな状況に追い込んだあの男･･････ジンへの復讐心が湧き立っていたいたはずなのだ。
──あの冷血漢野郎に、これ以上相棒に危害を加えさせる訳にはいかねえしな。
「──ハハっ･･････！そうだ、そうだよなぁ･･････」
俺の事も綺麗さっぱり忘れ去られていることは非常に悲しいが、それ以上に相棒の記憶からあの男の存在が消えたことに喜びを感じている自分がいた。
──それに、此処なら相棒と二人きりで暮らせるし･･････ある意味最高な状況では？
記憶を無くしてしまった相棒には悪いが、俺にとってこの機会を利用することがベストな選択だ。
「──お前の名前は、ピンガだよ･･････」
「ピ、ンガ･･････俺はピンガっていうのか？」
ピンガは、小さな声で何度も繰り返して口に出していた。
「──じゃあ･･････、アンタの名前は？」
射抜く様な視線が俺を捉えて、穏やかだった鼓動が早くなっていくのを感じる。
「──俺はA。お前の相棒だよ」
例えこのまま記憶が戻らなくたって、相棒を俺がずっと側で支えて行くのに変わりはないのだ。
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作者名：猫饅頭。 | 作成日時：2023年4月29日 2時
