第22話-代償 ページ24
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相棒の目が覚めたのは、あれから数週間程後の事だった。
数日の休暇を終えたマスターは、『何かあればまた連絡を入れて下さい』と言い残し、本土の方へ帰って行った。
「あ〜ヒマ、超暇だ・・・・・・」
話し相手が居なくなった俺は、ベッドで時間を持て余していた。
「眠れないし・・・・・・」
退屈で日中眠って居ると、逆に夜は目が冴えてしまって眠れなくなってしまっていた。
全身を激痛が駆け巡りながらも、何とか起き上がるのに成功し、俺は出入り口に向かった。
扉を開けるとすぐに砂浜があった。俺は靴も履かずに、柔らかくてふかふかの砂浜を一歩一歩慎重に歩いて行く。
波に触れるすぐ近くまで来ると、俺はそのまま海辺に寝転がった。
海は静かなもので、船一隻も見かけない・・・・・・正真正銘の孤島だった。
雲一つない満点の星空を眺めながら、波の音に耳を澄ませると、気持ちが安らいでいくのを感じた。
「──・・・・・・」
俺は不自由な右腕に目を落とし、目を細めた。
包帯が巻かれたこの右腕は、あれから時間が経過するにつれて自由が効かなくなっていた。
マスターが医者から聞いた話によると、どんなにリハビリをしても元のように動かすことはできないとのことだった。
──犠牲にしては、マシな方だけど・・・・・・な。
だからといって、使えないのは不便で仕方がない。
「・・・・・・俺、これからどうしたらいいんだろうな・・・・・・」
こんな状態だと、俺は相棒のお荷物になってしまうのは目に見えている。
「・・・・・・海、綺麗だな」
俺は力なく立ち上がって、海へと歩を進める。冷たい海水が肌に触れて、すごく気持ちが良かった。
そして、膝下まで水が浸かった時・・・・・・腕を強く引かれた。
「うわッ?!」
勢い良く後ろに引かれた事で、尻餅を付いてしまい下半身が海水に浸かってしまった。
「──お前ッ、何しようとしてるんだ!!」
「・・・・・・えッ?!相棒っ??」
「──ったく、目覚めた途端に止めろよ・・・・・・」
突然目を覚ました相棒の姿に、俺が戸惑っていると相棒はそのまま言葉を続けた。
「──知らねえ奴でも、目覚め悪いだろうが・・・・・・!」
「・・・・・・は?冗談止めろよ、マジで・・・・・・」
軽く笑う俺と違い、ピンガは無言のまま真顔で立っていた。
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作者名:猫饅頭。 | 作成日時:2023年4月29日 2時