第21話-利用 ページ23
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「──それで、マスター･･････あれからどのくらい時間が経ったの？」
「今は正午なので･･････貴方が意識を失ってから、約二日です。重度の骨折でしたので、昨夜まで発熱が続いておりました。･･････あの医者の方には、船で出来なかった手当を施してもらって、早朝本土へ送り届けました」
俺は船に乗せられてから、丸二日も寝込んでいたというのか。
「──っう･･････」
激痛に耐えながら寝返りを打つと、隣のベッドに寝かされている相棒の姿が目に入った。
「──相棒は･･････」
相棒の容体を聞くと、マスターの声に少し緊張が含まれていた。
「･･････彼は、まだ意識が戻っていません」
「昏睡状態って事なのか？」
「いいえ、一瞬ではありますが･･････氷袋が額に接触した際に反応が見られたので、昏迷状態ですね。意識がないというより、眠っているという方が合っていると医者の方から聞いております」
それを聞いて、少し安堵すると同時に、マスターから感じた空気の変化を察して声を掛けた。
「マスター、何か聞きたそうだね？」
「え、･･････私は特に、なにも･･････」
マスターは数秒の間口籠もっていたが、覚悟を決めたのか話し始めた。
「･･････私は、詳しい事は聞きません。ただ、お一つだけ･･････確認したい事があるのです」
「何かな？俺が答えられる範囲の事ならいいよ」
マスターの指先が、振り向いた俺の解けた髪の毛にそっと触れた。
「貴方は･･････彼の事が･･････。──彼は、貴方にとって･･････一体何なのでしょうか？」
熱が籠った様な瞳で俺を見つめ、震える様な声で答えを求めていた。
その視線をただ見返して、俺は静かに答えた。。
「──俺の全て、さ･･････。相棒は、この世で唯一無二･･････俺の兄弟なんだ」
血縁関係はないけれど、俺と兄弟は血の繋がりなんてモノよりもずっと深いところで繋がっている。
「だから、俺は何よりも相棒を優先する」
「･･････自身を、こんな身体にしてしまうくらい･･････ですか？」
「──もちろん」
俺が即答すると、マスターは瞼を閉じて俯いた。
「そう、ですか。──それでも･･････私は、そんな貴方を･･････ずっと心からお慕いしております」
俺は健気なその手を握って、微笑み返すことにした。
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作者名：猫饅頭。 | 作成日時：2023年4月29日 2時
