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第20話-逃亡先 ページ22

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「Aさん、私・・・・・・凄く心配しておりました」



 倒れた俺の元へと駆け寄ってきたのは、彼──俺が目を掛けていたバーのマスターだった。



 彼はペットボトルに入った水を俺の口元に運ぶと、ゆっくりと飲ませてくれた。



「・・・・・・ありがとう、マスター。ここまで助けに来てくれて、凄く感謝してるよ」



 そう囁くと、彼は整った顔を真っ赤に染めて俺を見つめていた。



「今すぐにでもお礼をしてあげたいところなんだけど、生憎全身骨折してるもんでね・・・・・・。またの機会にでも」



「そっ、そんな、そんなことはお気になさらないで下さい・・・・・・!私がお助けしたくて、したことですから・・・・・・」



 本当に彼は俺に惚れ込んでいるらしい。



 俺の命令で理由もなくホテルへ待機されておいて、ついでに知り合いの闇医者を引きずり出してくる程度には・・・・・・。



──哀れだな。



 都合の良い場所を作るために、借りを作らせられて、好意を持つ様に誘導されて、俺の言いなりにさせられた男。



 相棒の為に俺が彼の好意を利用しているだけだと言うのに、全く不条理な世の中なものだ。



 でも、今回彼に助けられた事に対して、感謝しているのは本当だ。



 だから、お礼に彼とこれからもオトモダチでいる事にしよう。



 相棒の目が覚めたら、改めて紹介してあげるのもいいかもしれない・・・・・・そんな事を考えながら、俺達は静かで闇に沈んだ海の上を渡って行った。



















「お身体のご調子は如何ですか?」


 マスターに声をかけられて、俺はぼやけていた意識を取り戻した。



 気が付くと、俺はベッドに横になっていた。


 ログハウスのような建物のようで、天井には天窓が付いていて太陽の日差しが差し込んでいた。



「ここは・・・・・・?」



「私が所有している無人島の一つです。・・・・・・正確には、5年ほど前に死んだ祖父から譲り受けた土地ですね」


 話によると、俺達はマスターの別荘に連れて来てもらったみたいだ。



「実は建物は外から見ると、自然と一体化している様に見えるので、建物内にいればまず外部の人間に見つかる事は限りなくないと思います」



「・・・・・・へえ、そりゃ凄いね。君の祖父は雲隠れでもするつもりだったの?」



「祖父は建築家だったんです。田舎の名家・・・・・・のようなものですね」



 隠れ家としては、都合の良い場所だ。



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作者名:猫饅頭。 | 作成日時:2023年4月29日 2時

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