第16話-覚悟 ページ18
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反射的に取り出したオペラグラスで見えたのは、眩い光に照らされた黒い船･･････それは潜水艦だった。
そして、次の瞬間には海から唸るような破壊音が鳴り響き再び海が漆黒に包まれていた。
「──ッ！！」
俺は息をするのも忘れて、固まっていた俺の脳裏に相棒の顔が浮かんだ。
──さっきのアレが潜水艦なら、ピンガは･･････！！
今だにピンガからの連絡は来ていない。つまり、潜水艦には乗っていないはずだ。
だからといって、ピンガの安全が保証された訳ではない。･･････何故なら、先程の潜水艦は何者かによって攻撃を受けていたからだ。
──むしろ、危険じゃねえか！！
あの潜水艦は、組織の工作員が国外へ不法出入国する際にも使用されていて、組織の情報が詰まっているとピンガから聞いていた。
そして、その潜水艦で合流するはずの『ジン』という男が、いかに冷徹で非情で、簡単に仲間だった人間を殺せる奴であるかを知っていた。
俺はその身で体験した事が何度もあった。出会い頭に頭に拳銃を突き付けてきて、ことあるごとに相棒のプライドを踏み躙り、しまいには何度も会ったことのある相棒の顔すら覚えていないなんて、ふざけた野郎だったのだ。
そんな男が、敵から攻撃を受けて取る行動なんて･･････ある程度予想がつく。
その中でも一番最悪なのが、潜水艦が先程の攻撃でダメージを受けて操縦不能になった場合だ。
その場合、組織の情報が詰まったこの潜水艦を、証拠隠滅のために自爆させるまでが奴の仕事になる。
「･･････」
奴の捻くれた性格上、正体を警察に見られてしまっているピンガをこれに乗じて始末する･･････なんてこともあり得る話なのだ。
俺は茂みの中に手荷物を隠し、素早く潜水用の道具を身に付けると、携帯のあるアプリを開いた。
それは、万が一の時にお互いの位置を把握する為のGPSだったのだが、何の反応が見られない。
「──クソッ、この機能水中じゃ使えねえじゃねえかよ！！」
相棒の位置は分からない、──けれど･･････このまま黙って連絡を待っていられる程、俺は『ジン』という男の事を信用していない。
俺は防水ケースに携帯を入れると、そのまま海に向かって走り出し勢い良く飛び込んだ。
嫌な予感を掻き消す様に、俺は深い海へと潜って行く。
たった一人の、相棒の姿を探して。
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作者名：猫饅頭。 | 作成日時：2023年4月29日 2時
