第4話-Side:ウォッカ ページ49
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仕事を終えた後、兄貴をセーフハウスまでポルシェ356Aで送り届けた。
そして、その後・・・・・・駐車場に停めてあった俺の車で、ルシアンを部屋まで送ろうとしていた。
その間も、助手席に乗っているルシアンは、一切言葉を発さず、ただ窓を眺めていた。
「オイ、ルシアン・・・・・・」
俺が名前を呼ぶと、ルシアンはこっちを向いた。
「・・・・・・どうしたの、ウォッカ」
心なしか、いつもより少し声のトーンが低い。・・・・・・また何か考え事でもしているのだろう。
「余計な事は考えない方が身の為だぜ。昔からお前は、無用な心配をしてやがるからな・・・・・・」
俺は信号待ちになると、車のダッシュボードを開き、ソレを取り出した。取り出したソレを、ルシアンの手のひらにに乗せた。
「チョコ・・・・・・」
「それでも食って、元気出せよ」
ルシアンは、暫く手のひらチョコレートを眺めていた。
そして、長い前髪から覗く・・・・・・その透き通った海の様な青色の瞳で俺を見つめると、ルシアンは整った顔を綻ばせた。
「━━ありがとう・・・・・・、ウォッカ」
「・・・・・・おっ、おうよ」
見慣れているはずの奴の笑顔に、何故か動揺してしまった。
━━どうしちまったんだ、俺・・・・・・。
小さいガキの頃からずっと面倒を見てきた奴の事を、一瞬だけ"可愛い"と思ってしまった。
「・・・・・・・・・」
奴の顔を再び見てみるが、次は特に何も感じない。
「・・・・・・? ウォッカ・・・・・・?」
「何でもねえよ・・・・・・」
━━気のせいだ、絶対。
「ハァ、ったく・・・・・・疲れでも溜まってたのか・・・・・・?」
こんな幻覚が見えるなんて、今まで生きてきて初めてだ。
━━この数年間は、仕事以外で女と会う事暇なんてなかったしよ・・・・・・。
ジンの兄貴とベクトルは違うが、奴も綺麗な顔をしている。
━━でも奴は、男だ・・・・・・。ありえねえ・・・・・・。
俺にはソッチの気は全くない。・・・・・・恐らく、単純接触の原理的な何かで、一時的に脳が誤解したのだろう。
「・・・・・・」
ルシアンはチョコレートを頬張りながら、また外を眺めている。
「・・・・・・ねえな」
信号機の色が青に変わる。
━━さっさと帰って寝るか・・・・・・。
俺は無駄な思考を振り払う様に、アクセルを力強く踏み込んだ。
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猫饅頭。(プロフ) - もの太郎さん» コメントありがとうございます!嬉しいお言葉光栄ですっ...!!これからも、少しずつではありますが、更新していこうと思います。暖かく見守って頂けると幸いです。 (2023年4月6日 19時) (レス) id: 72178cca42 (このIDを非表示/違反報告)
もの太郎 - 超好き!!!!更新頑張って下さい!応援してます! (2023年4月6日 19時) (レス) @page17 id: 415bc119d2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:猫饅頭。 | 作成日時:2023年3月1日 3時