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北瀬 Aside
棺の隣で、私は見ていた
「なして殺した」
暗く、感情のない声で、包丁を高く構えた鈴木さん
三澄先生の止める声も届かない
ああ、羨ましい
単純に、思った
彼は答えの出ない問いに囚われずに済んだのだから
私は悪くない、と逃れるために身をよじる彼女を、見つめる
「・・・悪くないわけないのにね」
事故だったとしても、ひとりの命を奪ったのだ
そっと棺に触れ、呟いた
「貴女はもう、二度と人肌に、愛しい人に触れることはできないのに」
先輩は、こんな私を許さないだろうか、認めないだろうか
ふと考える
これから何が起こるか知っていて、止めない私は、彼にどう映るだろう
淡い希望と、覆い隠すように暗い靄が心を占める
倒れ伏した女性の止血をしている先輩と目が合う
「北瀬!
控室からタオルを!」
その声は、真剣だった
驚く位に綺麗な声だった
「早く!」
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作者名:抹茶金時 | 作成日時:2018年2月3日 12時