47 ページ47
日付を跨いでしまった深夜、私は帰ってきた零と遅めの晩ごはん…というよりは夜食を食べていた。
おそらくこの時間になるだろう事を予測して、胃もたれしない軽めの和食を用意しておいてよかった。
「うん、旨い」と食べ進める零を微笑ましく見つめていると、箸休めにと作っていただし巻き玉子を食べたとたん、彼の表情が少し曇った。
『あ、嫌いだった…？』
「いや、すごく旨い」
『？？』
ではどうしてその顔？と彼を見つめていると、
「……今日、風見から“弁当うまかった”って言われた。“特に卵焼きが絶品だった”って」
美味しいと誉められたことは素直に嬉しかったが、ここで露骨に喜ぶと更に零の機嫌を損ねてしまいそうだったので、私は『そう、よかった』と軽く返したのだが…
彼はなおも少しむくれている。
余程お弁当が悔しかったんだなぁ、と、そんな零をなんだか可愛く思ってしまう。
『ねぇ、今度の日曜日って、零あいてる？』
「あいてるけど」
『じゃあピクニック行こうよ！
私がお弁当作る！！
零のリクエストいっぱい作るから。ね？』
「まぁ、Aが行きたいなら」
と言いつつも、ご飯を食べ終わるとさっそく行き先の候補を絞り始めた零に笑顔がこぼれる。
私は後片付けの手を動かしながら、零に声をかけた。
『それで、お弁当のリクエストは？』
「そうだな、まず唐揚げは外せないな。
後は、卵焼き、ポテトサラダにミートボールに」
『王道だね』と笑うと、零が少しはにかんだように微笑んだ。
「ひとに作ってもらうの初めてだからな。」
『え？お母さんに作ってもらったことないの？』
「……ああ」
一瞬寂しそうな顔をした零に、聞いてはいけない事だったのだろうかと私は少し焦った。
そういえば、零はいつも家族の話はしない。
私の覚えている例の断片的な記憶でも、零のお母さんなんて出てこないし…
出てくるのは“先生”と呼んでいた女性だけ。
零の家族って、どんな人達なんだろう…
聞いてもいいのかな…
私が迷っていることに気づいたのだろう、零は
少し困ったようにふっと微笑んだ後、私の頭を優しく撫でながら口を開いた。
「……俺はな、孤児だったんだ。
小さい頃はアメリカの、ある施設で育った。
物心ついた時からそこにいたから、両親の顔も知らないんだ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 211人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：蒔々 | 作成日時：2018年3月17日 2時
