恋した彼はトリプルフェイス③【名探偵コナン】 (ページ30)

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「なら、既成事実でも作ってみるか？」

一気に詰められた距離。
そして抵抗も虚しくあっという間にソファーに押し倒された私の頬を、彼の長い指がなぞるようにスッと撫でる。

「そうすれば、安室君に会いにくくなるだろう？」

ふっ、と笑った赤井さんの顔をめがけて、私は渾身の突きを放った。
一瞬『入った』と思ったが、しかし私の拳はやはり空を切った。

「ふん、色気のない反応だな。
お前の真似をしてみたんだが。」

『っな！？』

にやりと笑う赤井さんに、列車での自分を思い出し私は羞恥心で真っ赤になった。

『き、気づいてたの！？』

「…まあな。覚悟のないハニートラップは身を滅ぼすだけだぞ。わかったら二度と」

『気づいてたならなんであんなこと…！』

「あんなこと？」

『……キ、キス…してきたじゃない』

「ああ……ついな」

『ついって…！』

「なんだ。続きがしたいのか？」

『違います！！』

「ふふ、冗談だ」

私の上に覆い被さったままそんなことを言う彼。なんだか楽しそうにみえるのは私の気のせいだろうか。
まるで私をからかって遊んでいるような態度なのに、不思議と嫌な感じはしないのはなぜだろう。

今の彼は、昴さんだった時よりも自然で、
言葉は意地悪なのになぜか優しく感じる。
じっと彼を見つめていると、

「なんだ、やっぱり続きがしてほしいのか」
と赤井さんは意地悪な笑みを浮かべた。

『ちがっ！！は、離してください！』

赤井さんの腕の中から抜け出そうともがくと、
彼はクスリと笑い、今度はすんなりと私を解放してくれた。