バルセロナと危機感 ページ27
「ピ、ピチット…なんでここに…？」
プールから頭だけを出してAはピチットにそう問う。
「ちょっとクリスに呼ばれちゃって…」
「クリス達なら勇利の所に行ったよ…」
「そっか…」
この会話の後に沈黙が流れてすこし気まずい雰囲気が流れる。
この沈黙を最初に破ったのはピチットのほうだった。
「じゃ、じゃあ僕クリス達の所に…」
去ろうとするピチットをAは「待って！！」とすかさずひきとめる。
「…何？」
「ピチット、私のこと避けてるでしょ」
「避けてない」
「嘘！いつもと様子違いすぎ！！」
あからさまな嘘にAはイラ立って水着姿のままプールから出てピチットに詰め寄る。
Aの脳内にはジョンとＪＪの言葉が浮かんでいた。
「私に何か怒ってるなら言ってよ」
「違っ…」
『いっつも冷たい態度とってるからじゃねー？』
「私が冷たい態度だから？」
「いいから服を…」
『Aはもう少し優しくならないと』
「私が優しくないから…」
「A！！！」
ピチットの大声と共にAはガッと両手首を強い力で掴まれる。
試合の時のような真剣な目にAは目が逸らせなかった。
「そうやってむやみに無防備な姿を晒すな！！
たとえ僕の前だからとしても僕は男だ！！」
そう言った後、ピチットはしまったと思い、近くにあったバスタオルを手に取ってAの肩にかけた。
「風邪引くから…ちゃんと温めて…」
ピチットはそう言い残すとその場から出て行った。
「はぁ〜…」
エレベーターを待っている間、僕は顔を覆ってその場にしゃがんだ。
Aは男への危機感がなさすぎる。
そこがAのまだ幼い所だ。
だけど、怖がらせるつもりはなかった。
さっきの目を見開いて驚いているAの顔が頭から離れない。
「…嫌われたかな…」
ピチットが出て行ったあと、体の力が抜けてその場に座り込んだ。
手首を強く掴まれた感覚がまだ残っている。
真っすぐな真剣な目、いつもより低い声。
先ほどのピチットを思い出せば全身が熱くなって
心臓の動きが早くなる。
「かっこいい…」
なんて思ってしまう私はおかしいのだろうか。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 136人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
鈴(プロフ) - 雪巴さん» 初めまして！コメントありがとうございます！昔スケートやってらしたんですね。滑っている文とかで至らない所もあると思いますが、楽しんで頂けるように頑張ります。 (2016年12月28日 16時) (
レス) id: c94c726e60 (このIDを非表示/違反報告)
雪巴 - ピチット君かわいい〜//// いつも楽しく読んでいます。私昔スケートやってたので夢主ちゃんやピチット君が滑っている文も夢主ちゃんがピチット君のことを考えている文もドキドキしていますこれからも頑張ってください。ピチット君愛してる (2016年12月27日 19時) (レス) id: fd274c24e7 (このIDを非表示/違反報告)
鈴(プロフ) - なっぷんさん» はじめまして。コメントありがとうございます！毎回キュンキュンしていただけてるなんて嬉しいです。自分もなんとか仲直りさせることができて安心です（笑）これからも楽しんでいただけると幸いです。 (2016年12月21日 23時) (レス) id: c94c726e60 (このIDを非表示/違反報告)
なっぷん(プロフ) - いつも楽しく読んでます！こんな私がコメントしてもよいのだろうか…と思い、いつも踏みとどまっていたのですが今回、コメントを送らせていただくことにしました！毎回キュンキュンしてます笑二人が仲直りしてよかった！これからも頑張ってください！ (2016年12月21日 1時) (レス) id: b49a9d220c (このIDを非表示/違反報告)
鈴(プロフ) - Mr. Nàpoliさん» はじめまして。一番好きだなんて恐縮です！ありがたいです！！楽しんで頂けるように頑張っていきます！！ (2016年12月20日 23時) (レス) id: c94c726e60 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：十五
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php
作成日時：2016年12月12日 1時
