【ユーリ!!!on ICE】マーメイドの太陽

選択１ ページ19

飛べた日からみるみるAのジャンプは形になっていった。

トウループからアクセルまで。

まだ失敗は多いが、Aができるジャンプはほぼ回復していた。

そんな時、Aはシングル時代のコーチであるケビンに声をかけられた。




スケート場の近くの喫茶店に入り、ケビンはサンドイッチを二人分とコーヒーとオレンジジュースを注文した。

店員が去り、ケビンと二人になる。

「Aなんで呼び出したかわかるな」

「…なんとなく」

「キャリーから聞いてる。お前はかなり筋が良いとな。

　どんどん技術に磨きがかかっていって魅力的になった。

　彼女にお前のコーチを頼んで良かったと思っている」

ケビンは一息おいて、本題を口に出す。



「また、シングルの活動をしないか？」

そう言ってから今度は間を入れず言葉を続ける。

「いや、無理にとは言わない。試合で2種目出ることも可能だが、

　アイスダンスはカップルでの競技だから、パートナーのこともあるし

　練習時間のことも相談がいるからな

　お前にとって負担になることも増える。

　よく考えて答えを出してくれ」


注文したサンドイッチとコーヒーとオレンジジュースが運ばれてくる。

Aはオレンジジュースを一口飲んだ。








夜のリンクで滑りながらAは考えていた。



シングル…正直またやりたい気持ちはある。

だけど、私にはアイスダンスもある。

2種目を掛け持ちして大会に出ることはできるけど…

ジョンとの練習の時間を少しシングルの練習に回さないといけない。

そうなればクオリティはどうなるのだろう。

質が落ちてしまうのなら意味がない。

ジョンも…二人での練習時間が減るのをどう思うだろうか。



考え込んでいたせいかAはダブルフリップを失敗してこけてしまう。

そんな時、いつもの明るい声が聞こえた。

「あ〜惜しい！」

リンクの外からピチットがいつもの笑顔で見ていた。



「今日来ないのかと思った」

Aはそう言って自分の水筒の水を飲んだ。

「今日はちょっと用事あったから遅れたけど、Aの為ならどこでも行くよ」


Aはピチットのほうを向いた。

「ねえ、ピチット。私はどこまでやれると思う？」



「それはA次第だよ」


ピチットは言葉を続けた。

「僕には関係ない」

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