【ユーリ!!!on ICE】マーメイドの太陽

可愛気のない ページ17

「…よし。大丈夫」

体調がすっかり回復したAはコソコソとスケート場へと訪れる。

Aがコソコソとする理由。それは…




『ここ…いて…』

弱っていたとはいえ、ピチットを引き留め、

おまけに手を繋いでもらって寝たことがあとで思い出して恥ずかしくて仕方なかった。

起きた時はピチットは帰っていていなかったので、あれ以来会っていない。



「ピチットにどんな顔して会えばいいの…」

「ピチットがなんだって？」

背後から聞こえた声にAは叫びそうになった。

なんとか息を整え、背後にいたジョンを見た。


「すっかり良いみたいだな」

「おかげ様で…」

「ピチットや勇利にもお礼言えよ。特にピチット。

　お前ピチットの手を…」

「ぎゃあっ！わかってるから言わないで！！」

Aは顔を真っ赤にしてジョンの言葉を遮る。

「ふ〜ん」

ニヤニヤとするジョンを睨みつけ、Aは向きを変えてどこかに行こうとする。


「どこ行くんだ？」

「お礼言ってくる！！！」









Aはピチットを探しに行くと、案外すぐに見つかった。

ストレッチをしているピチットを見つけ、声をかけようとしたが、

Aより早く別の人物がピチットの名前を呼び、駆け寄った。

「ピチット、貸してくれたＤＶＤ面白かったわ」

「本当？良かった〜」

１７歳とは思えないほどの大人の色気と、飛びぬけたスケートの技術で有名な女子シングルの選手のだった。


「ピチット、お礼もしたいし今度二人でデートしましょうよ」

そう言ってピチットの腕に自分の腕を絡ませた。

それに対し、ピチットは「予定合えばね〜」と笑う。


そんな様子にAは出直そうと来た道を戻ろうとした時。

「あ！A体調良くなったんだね！！」

ピチットはAの姿を見つけ、嬉しそうに駆け寄ってくる。

「う、うん…」

「良かったね！」


そこへ女性の選手が再びピチットの隣へと来る。

「あら、Aひさしぶり。動画見たわ

　可愛くなったと思ったけど、実物はそうでもなかったわね」

意地悪な笑みを浮かべそう言い放つ。

「ピチット、日本人のお子ちゃまは放って練習に行きましょ」


Aもその場を離れようと向きを変える。



胸の辺りがザワザワする。

ピチットは誰にでも優しいから友達が多い。

だから可愛気のない私にも優しくしてくれて

練習にも付き合ってくれて





「え！？Aめちゃくちゃ可愛いよ？」

「…は？」
　

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