【ユーリ!!!on ICE】マーメイドの太陽

好き。勝ちたい。楽しい ページ12

Aの手をとって滑りだしたピチットは両手に繋ぎ直し、向かい合うように後ろ向きで滑る。

「き、急に何」

「Aはすごく真面目だから、気持ち的に囚われてるんじゃないかって思ったの」

「え？」

「焦る気持ちもわかるけど、Aは【楽しむ】ってことも忘れてるんだよ

　【好き】だって気持ちも【勝ちたい】って気持ちと同じくらい

　【楽しむ】って気持ちも大事だよ」



ピチットは「見てて」と言ってAに微笑みかけ離れると、

流れている音楽に合わせてステップを踏む

そこから、ターンやスピンなどの技をやってみせる。

Aは初め状況についていけなかったのだが、

なんだか楽しそうなピチットの姿にAもなんだか滑りたくなり、ステップを踏む。



ステップからのターン

イーグルからのイナ・バウアー

スパイダーからスピン、

ターン、ファンスパイラル

もう一度ターンをしてビールマンからスピン




今日、なんだか調子がいい

ファンスパイラルの支持なしも試してみたけど、今までで一番マシかも

すごく楽しい

こんなに楽しかったっけ








「あ……」


自然な流れで飛んだAにピチットは小さく声を出した。

しかし、ジャンプは成功しなかった。

だけどAはすぐに立ち上がり滑る。




今までで一番マシだったかも

久しぶりだこんな感覚。

なんだか怖くない。

どうしてだろう。

確証はないけど、飛べそうな気がする。






Aはピチットと目が合い、ニッと笑う。

ピチットは何かを察して急いで携帯で動画の準備をした。








「ハァ…ハァ…」

Aは氷の上に座り込んだ。

「A！！」

「え！?ピチット！？」

ピチットは嬉しそうにAに駆け寄り、そして抱きしめた。


「いきなりアクセルなんてすごいじゃないか！」

「私が飛べるジャンプの中で一番難しいから好きなジャンプだったの

　練習しすぎて骨折しちゃったけどね。

　本当はダブルいきたかったけど、シングルになっちゃった。

　着地もグラついちゃったし」

「それでも上出来だよ！！」



Aは「ねえ、ピチット」と背中に腕を回し服を掴む。


「私…飛べてた…？」

「うん」

ピチットの服を掴むAの手に力が入る。

瞳から一筋の涙が零れた。




ピチットは嗚咽を混じりに大泣きするAの頭を撫でた。

優しく愛おしく

ただ黙って撫でた。



お守りストラップがそんな二人を見守っていた。

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