【鬼灯の冷徹】子狐こんこん伍

子狐と社内恋愛事情。 ページ1

薬剤部にも新人が入り、Aの同期薬剤師獄遊は教育係として新人と行動を共にしていた。

「こんにちは。これ発注書です」

「はい。確かに」


獄遊は鬼灯へと発注書を渡した。

動物獄卒の説明会の準備で忙しいのは机の上は書類などが積まれている。


「…Aに連絡事項はありますか」

獄遊の問いかけに鬼灯は数秒考えた後、

「荷物が届いているので後で取りに来るように伝えてください」

とだけ言って鬼灯は仕事に戻ってしまった。



「荷物届いているならついでに持って帰ったほうがよかったんじゃ…」

薬剤部への帰り道、新人の問いかけに「いや、これでいいんだ」と返した。


「Aと鬼灯様は婚約してるんだよ」

「ええっ！？」

「鬼灯様は立場上仕事中はあんまり私情でAに会いに行けないんだよ。

　しかも最近忙しくてプライベートも全然会えてないみたいだからそろそろ限界かと思って」


「なるほど…」と納得する新人にもう一つ教えた。




「ちなみにあの二人は婚約しておいてなかなか入籍しないから『結婚詐欺カップル』って言われてる」





「A、鬼灯様が荷物届いてるから後で取りに来いって」

「ん？わかった」

今手を付けている仕事を区切りがいい所まで終えたAが立ち上がって

荷物を取りに行くと言って薬剤部から出ていく。


「…３０分」

主任の一言を筆頭に皆は「４５分」「２０分」と口々に時間を言っていく。


「これは…？」

「Aが戻ってくるまでの時間を予想する遊び」








「あ、あの鬼灯様？」

Aを人気のない死角に連れ込んだ鬼灯は小さな体を抱きしめるように

首元に顔を埋めてスーハーと匂いを堪能する。


「最近全然会えてなかったんです。もう少しだけ」

「…お疲れ様です」


Aも鬼灯の着物に顔を埋めて久しぶりの匂いを嗅いだ。

温もりと鼓動が心地よく、離れるのが惜しくなっていく。


「引き留めてすみません。ありがとうございました」

「いえ…仕事が一息ついたらデートしましょうね」


ちゅっと頬にキスをしたAはえへへと照れたように笑って帰っていき

「はあぁあ〜〜〜〜…」

片手で目元を覆う鬼灯深いため息をはいた。



「絶対仕事終わらせる」





荷物を持ってご機嫌そうに帰ってきたAに

皆は「３０分…主任の勝ちか」とヒソヒソと話す。

隣のデスクに座ったAに獄遊は

「首元ボタン開いてるぞ」

とコッソリと教えてあげたのであった。

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