Bittersweet (ページ9)

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「ねぇ、どこに行くの？」

ベットからそろりと抜け出した智くんに、声かける

最近、情事が終わったあとにいつもどこかに出かけてるんだよな

あまり干渉はしたくないから細かく言うのは嫌だけど、それでも気になってしまう

「別に？どこにも行かないよ？」

嘘だ

夜な夜な抜け出しているのはよく分かってる

俺は立ち上がろうとした智くんを後ろから抱きしめて、首に吸い付いた

「 ……智くんはオレのものだよね？」

「そんなに跡付けといて何いってんの？」

いつもの智くんの口調のはずなのに、なんだか冷たく感じてしまう

「ね、キスしてもいい？」

「ダメ」

智くんは猫のように俺の腕からするりと抜け出し、立ち上がった

「どこに行くの？」

「しつこい人は嫌いだよ」

ピシャリと言うと、智くんはそのままバスルームへ入っていった

ノズルから出てくる水の音がして、俺はベットに倒れ込んだ

大学のサークルで出会った智くんに一目惚れした俺

ダメ元で告白して

OKなんて貰えるとは想定外だから、死ぬほど喜んだっけ

フランスで松本を見つけたのだって、フランス出張で智くんが好きなフィナンシェを買って帰ろうと、たまたまあの店に入ったのがキッカケだった

俺は智くんのためなら何でもできるし、深く愛情を注いできたつもりだった

どこかで歯車が狂い出したのか……智くんはただただ俺に抱かれているだけになってしまった

俺には君しかいらないのに、君は一体、誰が必要なんだ？

少し眠ろうと目を閉じると、何故か俺は松本の夢を見ることになる

＿＿＿起きた頃にはその夢は、すっかり忘れているのだけれど。

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