Bittersweet (ページ33)

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なんだよ。たまの休日なのに

少しイライラしながら、インターホンの応答ボタンを押した

「 …………はい」

適当に返事をしながら、パネルに映し出された姿を見て、驚いた

夢でも見ているのか？

『あ、あの…………松本です』

なんでここが？どうして来たんだ？

俺は大慌てで廊下を走り、玄関に向かった

扉を開けると、いつもの変わらない美しさの松本が緊張気味に立っていた

「 …………松本？」

本当に、松本なのか？

「す、すみません。突然来て」

「なんでここが？」

「お、大野さんから聞いて……」

目を潤ませて俺を見つめる松本の視線に、思わず息を吐いた

「 …………入る？」

松本はキョロキョロと部屋を見ながら、戸惑った顔をした

そりゃあこんな部屋だと、困惑もするか

いつも足を置くスペースだけ物がなくて、そこだけ足跡みたいに空間が出来ている

「い、いそがしかったんですね……」

松本が困ったような声でフォローしてくれる

「 …………まぁな」

俺は恥ずかしくなって、キッチンに逃げた

「コーヒーでいい？」

「あ、はい」

キッチンからこっそりと見ると、松本は唯一綺麗なソファーに腰を下ろして、外を眺めている

「今日はなんで来たの？」

「美味しいチョコレートを買ったので、持ってきたんです」

松本は白い紙袋を持ち上げて、俺に見せてきた

「 ……そうなんだ」

なんだ

松本の作ったお菓子じゃないのか

手作りのものなんか、俺なんかに食べさせたくないよな

松本は紙袋からチョコレートを取り出し、ひと粒ひと粒説明してくれけど、頭に全く入らない

「でね、これが…………」

「なぁ松本」

「 ……はい」

びくりと体を震わせ、松本は俺を見た

「俺のこと、嫌いなの？」

「え？」

松本は大きな目を見開いて、俺を見た

「ど、どうして急にそんなこと」

「別に……なんとなく」

そうだ

なんで俺、こんなこと聞いてるんだろう

「さ、櫻井さんはどうなんですか？」

「え？」

「俺のこと、好きなんですか？」

「いや……別に」

俺が好きなのは智くんだ。振られたけど

ガタッと音がして顔を上げると、松本が目に涙を溜めて俺を見下ろしていた

「 …………松本？」