Bittersweet (ページ29)

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ふたりで美味しいお昼を食べ、商店街をぶらぶら歩いた

いい香りがするお茶屋さんで、渋い日本茶の試飲をしたり、古い文房具屋さんの店先にあったコンパスを見つけて懐かしいと声を上げたり

櫻井さんはいつもと違い穏やかに微笑んでいて、なんだか面食らってしまうんだけど

最初に出会った頃とは随分と印象が変わったなぁなんて思った

商店街を抜け歩いていると、いつか櫻井さんに会った川原のところに続いていた

そういえば、ここで櫻井さんのことが好きだって気付いたんだっけ

あの時となんにも状況は変わってないけど、ふたりで川原にを歩けるのは、なんだか嬉しい

「そういえばさ」

「はい」

「お前、ここで泣いてたよな？なんで泣いてたの？」

櫻井さん、まだ疑ってるんだ。アクビだって言ったのに

「前も言ったじゃないですかぁ。寝不足だったんです」

「ホントは違うんじゃねーの？」

「ホントですって」

笑いながら櫻井さんを見ると、櫻井さんは立ち止まってジッと俺を見ていた

「 …………櫻井さん？」

「俺さ……」

「はい……」

櫻井さんは何を言おうか、迷っているみたいで、口をパクパクさせている

すると空からゴロゴロという音が響いてきた

「え？」

天を仰ぐと、ポツポツと雨が降ってきた

「雨が……」

「夕立かも。どっか屋根のあるとこに行こう」

慌てて走り出したけど、雨の勢いは強さを増して、雨音が強くなっていく

ふたりで走って川原を降りると、屋根のついた駄菓子屋さんが見えた

「とりあえず、あそこに入りましょう！」

駄菓子屋に駆け込み、息を吐く

駄菓子屋の中はガランとしていて、中には人はいない

「急な雨でびっくりしましたね～」

全身ビッショリ濡れていて、尻ポケットに入れてたハンカチも役に立たない

「すぐにやみますかね？」

「 ………………」

「櫻井さん？」

櫻井さんは俺のことをジッと見つめて、動かない

どうしたんだろう

「櫻井さん？」

全く動かない櫻井さんの顔をのぞき込むと

「＿＿＿＿………………！」

櫻井さんの顔が近づいてきて

キスされていた………………

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