21 ページ21
.
「 松本さんって、彼女いないんですか？」
オープン当日のセールのための仕込みをしてたら、メレンゲを泡立てている岡本くんが聞いてきた
「 俺？いないよ。なんで？」
「 いや〜。同じクラスの子に聞いてこいって頼まれちゃって」
「 この店かなり前評判いいですよ！なんせフランス帰りのパティシエですもんね！」
タルトの生地を型に詰めていた山田くんが、そんなことを言いながら誇らしげな顔で俺を見てきた
「 評判いいの？よく知らないんだ」
「 えー！勿体ないですよ！松本さん顔も腕もいいのに、全然そーゆーのに興味無いんだもんなぁ」
残念そうに言う山田くんに、失礼だぞと岡本くんが釘を指す
ふたりは中々いいコンビワークで、雇ってよかったと思った
レジの方を見ると、箱にせっせと焼き菓子を詰めるカズと大野さんの姿
大野さんは普段全然やる気がなくて、俺が何を頼んでも何もしてくれないのに、カズが何かを言うと、キビキビ動く
カズは一体どんな魔法をかけたんだろう？
「 そんなもん掛けてませんよ」
「 えーーー？？？」
「 っていうか俺が何も言わなくても、あの人勝手に色々するよ」
お昼休憩中、俺が作ったオムライスをつつきながらカズに聞いてみたら、まさかの返事で驚いた
「 てっきりカズがお尻を叩いてやる気を出させてるもんだと思ってた」
「 なんで俺があんな汚いオッサンのケツをたはたかにゃいかんのよ」
「 だって俺が何を言っても大野さん何もしてくれないもん」
「 タイミングが悪かったんじゃない？あの人基本なんでもするよ」
肩をすくめながらオムライスを食べるカズに、フーンと返事をする
「 ひょっとして大野さん、俺が櫻井さんのこと好きなのに気づいて嫌ってんのかな？」
「 まさか。好きだと気付いてたらまず働かないでしょ」
カズが驚いたように言う
「 それに潤くん、傍から見てて櫻井さんのこと好きなようになんて全然見えないし。考えすぎだよ」
「 そうかなぁ？ならいいんだけどさ」
フゥとため息をついた俺に、カズがが優しく微笑む
「 潤くんホントに恋してんだね。いい顔してる」
「 そうかなぁ？」
「 そうだよ。キラキラしてるもの」
たとえ俺がキラキラしてたって
こんなに苦しい思いが続くのなら
恋なんてしたく無かったよ…………
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 247人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：サｯ子 | 作成日時：2016年5月25日 4時
