Bittersweet (ページ17)

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「松本？どうした？」

あ、また櫻井さんだ

じゃあこれはきっと、悪い夢なんだよね

そう思っても、頬を流れる涙を止めることは出来ない

「どうした？なにがあったんだ？」

「もう、やだ……」

いつもの夢の通り、櫻井さんは俺をきつく抱きしめてくれる。あったかい

「なんで泣くんだよ。笑ってくれよ」

「無理だよ……」

小さな声で言うと、ますますきつく抱きしめられる

「なんで無理なんだよ。いつもの負けん気はどうしたんだよ」

「そんなの無いよ……」

櫻井さんの背中に、キュッとしがみつく

いつも俺がしがみつくと消えちゃうのに、今日は消えない

「今日の櫻井さん、あったかいね……」

「なんだよ。いつもは冷たいみたいに」

「そうだよ。いっつも抱きしめてくれるのに、俺が抱きしめ返すと消えちゃうんだもん……」

俺は櫻井さんの胸に、顔を埋めた

いつもの香水の、いい香り

「俺、いつも抱きしめてるの？」

「そうだよ。俺の顔見て、笑ってんの」

「フフ……お前おもしろいから」

「そんなに俺の顔ってヘン？」

櫻井さんの胸から顔を上げると、櫻井さんは優しく俺を見て微笑んだ

「そういうとこが可愛い」

「え？」

夢そのものの甘い言葉と共に、櫻井さんの唇が降ってくる

俺はそれを、しっかりと受け止めた…………

「ん…………ｲﾀﾀ…………あれ？」

いつの間にか、自分の家のソファーで寝てた

俺、店に居なかったっけ？

凄くいい夢を見た気がする

ソファーから体を起こすと、見覚えのない上着が掛けられていたのに気付いた

この服、俺のじゃない…………

とりあえずコンタクトを外そうと、フラフラと洗面台に向かう

そして鏡で自分の顔の泣き跡を見て、思い出した

カズと喧嘩したんだ……

とりあえずシャワーでも浴びてスッキリようと、そのまま服を脱いでバスルームに入った

シャワーで体を流しながら、ふと鏡を見る

「 …………あれ？」

首元に見覚えのない、紅い跡

「なんだこれ」

軽く指でつついてみたけど、消えそうもないし、痒くもない

「なにかなあ……これ……」

人差し指で跡を軽くなでると

何故か心が軽くなったような気がした……

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