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川原で櫻井さんと出会って頭をなでられてから
夢に櫻井さんが頻繁に出てくるようになった
夢の櫻井さんはいつも俺に優しく微笑んでくれて、俺をいつも抱きしめてくれる
俺が抱きしめ返すと、櫻井さんは消えてしまう
＿＿＿いつもそこで目が覚める
現実のみならず、夢でさえ櫻井さんは俺を弄ぶんだ
そりゃそうだ
櫻井さんには大野さんっていう立派な恋人がいるんだもの
俺の出る幕なんか、全然ないんだ
頭では分かっちゃいるけど、夢の俺は分かっちゃいないみたいで
夢のなかの櫻井さんは
いつも俺に甘く微笑むんだ
そんなこと、あるはずないのに
「 潤くん、ちゃんと食べてるの？」
「 え？」
店のオープンまで半月になりそうなある日、カズがミーティング中に俺に鋭く聞いてきた
「 なんか最近すごい痩せたよね」
「 変わってないよ」
「 嘘。腰のエプロンの紐、すごい長く余ってるよ」
「 すごい観察力だね。刑事になれるんじゃない？」
「 話そらさないでよ」
いつになく真剣な目をしたカズに、沈黙してしまう
「 俺ってそんなに頼りない？相談もできない？」
「 違うよ。そんなことない」
「 じゃあ話してよ。なにがあったの」
「 ……なんにもないって」
「 結局言えないんじゃん。なんだよそれ」
「 カズ〜〜コーヒー買ってきたよ〜〜……？？
どうかしたの？」
「 ほら、大野さんも帰ってきたし！ミーティングしようよ」
「 こんなんでできるわけないだろ！？」
カズは今まで聞いたことないぐらいの大声で言い放ち、椅子を倒して立ち上がった
「 見損なった。俺たち親友だと思ってたけど。カン違いみたいだね」
「 カズ、待って……」
「 俺なんかいない方がいいよね。帰るわ」
「 あっ！カズ〜〜」
大きな足音を立てて去っていくカズを、大野さんもあわてて追いかけて出ていった
俺は追いすがることも止めることも出来なくて
ただ呆然とカズが出ていったドアを見てることしか出来なかった
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作者名：サｯ子 | 作成日時：2016年5月25日 4時
