128話.桐 ページ28
桐「誰や！！」
と扉の向こうを睨みつける。
目を凝らした先にいたのは
藤「望…濱ちゃん…」
重「…無事…やったんか…」
身体中にかすり傷をつけた2人が立っていた。
小「…おん、申し訳ない…結構時間かかったもうた…」
藤「…全然ええねんけど…いや、それより大丈夫なん？」
流星が少し心配そうに望をちらりと見上げる。
小「おん、大したことあらへん。ただのかすり傷や。…それより…」
濱「おい、淳太大丈夫なん？」
濱ちゃんと望は脇目も振らず一目散にこちらへ駆け寄ってきた。
淳太くんは俺の腕の中に泣き腫らした顔を埋めながら、ハァハアと荒い呼吸を続け、ぐったりと横たわっている。
小「…やばいんちゃう…？これ…。」
桐「…おん…。」
ちょっと体起こしただけでもこの状態。
どんなに強がっても、監 禁されている間に受けた体への影響はすぐにどうにか出来るようなものではなさそうだった。
望と濱ちゃんに状況をざっくりと説明する。
望は悲痛な表情で何度も心配そうに淳太くんを眺めている。
濱ちゃんは真剣な表情で話を聞いたあと、
濱「淳太…おつかれ。よう頑張ったな。」
と、淳太くんの背に手を当てた。
しかし、濱ちゃんが話しかけても、淳太くんは返事をせず、俺の腕に埋めた顔を少し上げて、虚ろな表情で小さく頷くだけだった。
濱「ずっと何も口にしてなかったんやろ？これ、飲めるか？」
濱ちゃんは荷物から水筒をとりだし、淳太くんの口に水筒の中身をゆっくり流しこんだ。
淳太くんの口元から零れ落ちた水が、俺の腕を濡らす。
淳太くんは小さく一口飲み込むと、虚ろな目に少しだけ生気が戻った。
その様子を濱ちゃんは安堵した表情で眺めたあと、少し表情を曇らせた。
濱「淳太、言いにくいんやけどな、こっから先は俺らに任せてほしい。」
中「…いや…」
濱ちゃんの発言に食い入るように、淳太くんのかすれた小さな声が部屋に響いた。
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作者名：そら | 作成日時：2019年5月8日 18時
