【3104 Birthday Box】 1126 BD 2015 (ページ40)

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Side S

「…智くん…」

大野が何かに引かれたように伸ばした手を、櫻井は優しく握った。

そう。

そして、手に入れたものは決して離しはしない。

「うん、俺は一生離れないよ…智くんは?俺のことを…どう思ってるの?」

「…お、俺は…」

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Side O

とうとう決勝の日がやってきた。

以前とはまったく違うネタで勝負したこの大会は、あれよあれよと言う間に勝ち残り

決勝戦の5組に残った。

ネタだけではない。

以前とは、ボケとツッコミも逆なのだ。

今まではボケが大野で、ツッコミが櫻井だったのだが

真面目なツッコミがまったく面白くなかった櫻井が、実生活でのズレた妙なボケをそのまま漫才に生かしてみようと逆にしてみたのだ。

大野の隣に櫻井が立ち、小さく息を吐いて、胸を張った。

その瞬間、大野は櫻井に一瞬自分の身体が引っ張られるような錯覚を感じる。

きっとこの空間に櫻井の質量が大きすぎるのだと

そんなおかしなことを思って、大野は小さく笑った。

「何？」

「何でもない」

あの夜、櫻井の部屋で大野が書き上げた一本の漫才。

それを少しずつ手直しをして、今日まで漕ぎつけた。

自分の一方通行の想いにケリをつけるように。

どこまでも噛みあわない自分たちの関係に意味づけをするように。

一生笑い話になんかできないに違いないけれど

人生いろいろ狂ったけれど

これで少しでも芸人として成長するなら、多少の元は取ったと納得しよう。

ネクタイの結び目に手をやり、少し緩めてから、また引き締めた。

整えるように手を髪に遣る。

それから大きく息を吐いて、鳩尾を二度ほどぽんぽんと叩いた。

意味のないそれらの行為を終え、手をすっと下ろした。

すると、その手に櫻井の手が少しだけ触れて、離れた。

すぐ離れたぬくもりを惜しむようにぴくりと動いた大野の左手に、再び櫻井の手が触れた。

その手にはっきりとした意志を感じて、大野は顔をあげる。

櫻井はまっすぐに舞台の方を見つめていた。

手を繋ぐでもなく、ただ引き合うようにくっついた手を

そのまま２人とも動かさなかった。

オワリ

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