12 ページ37
Side O
松岡との食事は、最初こそ２人だったが、時間が経つにつれて賑やかになっていった。
大野は盛り上がりの中心から少し離れたところでぼんやりしていた。
だがどちらにせよ、今日中にネタを書き上げるのは無理な話だ。
櫻井に連絡を入れるべきか。
頭が痛いからと出てきたのに、居酒屋の喧騒の中で電話するのは少し気後れがした。
嘘をつくつもりはないが、一応外に出て静かな場所を探した。
やっと邪魔が入らなそうな場所を見つけ、何と切り出すか軽くシュミレーションして電話をかけたのに、櫻井は出なかった。
今日は夜まで一緒にネタ合わせをするつもりだったから、バイトではない。
眠ってしまったのだろうか。
その後も隙を見つけては何度か電話をかけたが、電話は繋がらなかった。
嫌な別れ方をして出てきた自覚はあった。
勝手に携帯開いて、ロックが掛かってるからとぶち切れた。
肩がぶつかったのにも何も言わず、顔も見ないで部屋を出た。
自分が誰かにされたら、平気ではいられないに違いない。
身体がさっと冷え、手が震えた。
もう一度掛け直す。
やっぱり繋がらない。
更にもう一度。
何で…出ない？
「大野、お前大丈夫か？」
大野の様子がおかしいのに気づいた松岡が声をかける。
「ちょっと酔ったみたいで…。すみません、俺、そろそろ帰ります」
「帰りますって、帰れるのか？」
「まだ電車あるし、大丈夫です」
大野は笑顔を作ってみせた。これ以上迷惑はかけたくない。
「そっか。じゃ、家着いたら連絡しろ」
「女の子じゃないんですから」
「女の子だったら、タクシーで送ってる」
本当に心配しているらしい松岡に、わかりましたぁと笑って、大野は店を出た。
店の脇でまた櫻井に電話をかけたが、繋がらなかった。
不安が心臓を高鳴らせ、さらにそれが怒りに変わりつつあった。
翔くん。
翔くん。
お前、何してんの？
俺がこんなに何度も電話してるのに。
俺、連絡するって言ったのに。
何で出ねえの？
翔くん。
翔！
思考に押されるようにして、大野は次第に早足になり、ついに走り出した。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1020人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ありはる
| 作成日時：2015年11月12日 22時
