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Side S
「ねえ、イケメン櫻井くんはぁ、彼女いるの？」
「いないいない。コイツにいるのは、相方だけ。な、櫻井」
答えたのは隣の席の友人だった。
“相方”という単語に、女の子が反応を示す。
「え？何？相方って」
「コイツ、芸人なんだよ」
初めて会う男女の集まりに、櫻井が芸人であるという話題は格好のネタだ。
コンビ名だの、有名芸能人に知り合いはいるかなど、質問が飛び交う。
「何か面白いことやってよ」
「いや、俺はツッコミだから。漫才は１人でできないし」
「えー、じゃあ、相方くん、呼んじゃえば？」
『漫才見たいよねー』と女の子たちが騒ぎ出す。
「今日は…用事があるって言ってたから」
ノリのあまり良くない櫻井に、場に少し白けた空気が漂った。
「こんな感じだから、いつまで経っても売れねえし、彼女だって出来ないんだよ。しょーがねえなあ」
場の雰囲気を盛り返そうと、隣の友人が慌てて話し出す。
「好きな子とか、いないの？」
聞かれて、一瞬、心臓が高鳴った。
「あ…いるっぽい反応しなかった？今」
女の子の１人が見透かしたように言う。
「え？いるの？櫻井」
「…まあ」
「何だよお前。はっきりしねえな」
曖昧な態度に苛立ったのか、パシッと肩を叩かれた。
「もーいいわ、お前。それよりさあ、ここらでそろそろゲームでもやらない？」
立ち上がった友人に皆の注目が集まる。
櫻井は自分の携帯に目を走らせた。
着信を示すライトは点いていない。
頭が痛いと言っていたから、薬を飲んで眠っているのかもしれない。
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作者名：ありはる
| 作成日時：2015年11月12日 22時
