【3104 Birthday Box】 1126 BD 2015 (ページ25)

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「…せっかくいい感じだったのになぁ」

彼はおでこをさすりながら、あ～あと溜息を付いている。

もうさっきまでの雰囲気はお互いのおでこの痛みで消え去ってしまった。

聞きたかった言葉も言いたかった言葉も、出番の無いまま幕が下りてしまった気分で

なんとも言えない白々とした空気が漂った。

しかし、彼がそういう空気を破る、いい呪文を口にした。

「ん～しょうがない、飲もっか」

「飲む飲む」

思わず笑んだ俺に、彼も弾けたように笑い

それじゃ、と一緒にソファーから飛び出してリビングへと赴いて

二人でグラスを出したりキッチンから氷を用意したりと、てきぱきと動いた。

彼とは、こうやって何かする時の呼吸が合う。

きっと誰とやるより、スピーディにテーブルの上に酒の用意が出来上がる。

そして、俺は軽い満足感に浸る。

きっと、彼も。

それが、おかしくておもしろくて。

彼が傍に居るといつも。

「好きだよ」

CDを選別してる彼の背中に言った。

彼は「え？」という顏をして振り向いた。

「ブライアン・イーノが」

あからさまに、ガックリした彼の姿に笑いが込み上げた。

「智がこんなに意地悪だったなんて、知らなかったよ」

だって潤が俺を好きだって言うから。

もっと俺を好きな事、味わいたくなるのは人情ってもんだろ？

でも、ちゃんと言うから。

潤が好きだって、多分言うから。

だけどもう少し、ほんの少しこの幸せを、もうちょっとだけ…味あわせてほしい。

オワリ

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