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彼の瞳は、澄んで綺麗だった。
初めて会ったのはずいぶん前のドラマの撮影現場。
彼は…ギラギラした瞳で、俺を睨み付けていた。
その当時俺は
「この世界に味方はいない」なんて思い込んでトガっていた時代だったから
睨んでくる奴なんて、と挨拶以外はそっけない態度をとった。
それから10年以上も経って、再び彼と異国の地で仕事をすることになった。
再び会った彼は、すっかり落ち着いて大人の男になっていた。
そして、俺は彼に魅かれている。
彼にハグをされて、はっきりと意識した。
そして今、彼は俺の目の前に迫っている。
「…智…俺のハグは“嫌”じゃなかったんだよね」
確認を取るように聞かれ、火照った顔で頷いた。
「ていう事は“良かった”って事？」
「ばっ…」
思わず傍にあるクッションに手をかけた。
「いや、そういうんじゃなくて、俺のこと、少しは…」
核心を突く質問が来た。
きっと俺の顏は耳まで赤くなってるだろう。
それを見て察してくれればいいのに。
「うん、まぁ」
「ん？」
だから察しろって。
尚も彼は、聞き出そうと顏を寄せるので、俺はじりじりと後ずさり
とうとうソファーの端にまで追い詰められた。
ソファーがふかふかと揺れて、なぜか四角い中に閉じ込められたような気がした。
「ちゃんと言ってくれないと、またハグしちゃうよ」
おどけた口調だけど、じっと見つめる不思議なほど濃い色の彼の瞳は、熱っぽい。
「…潤」
「ん?」
なぜか遠い昔を思い出した。
鬼ごっこをしてた時のあの、つかまる寸前の奇妙な幸福感を。
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作者名：ありはる
| 作成日時：2015年11月12日 22時
