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そう思ったら止まらないのが俺の性分で、飛び上がるように立ち上がった。
テーブルを挟んで向かい合う彼は、訳が分からないといった顏を向けた。
「智、早く早く」
なんで急かされなきゃいけないのか、腑に落ちない顏で、それでも素直に腰を上げた。
きっと俺の嬉しくて堪らないという顏に、乗せられたに違い無い。
事実、俺はおかしくて嬉しくて胸が沸き立っていた。
立ち上がりきるのを待てずに、低い姿勢の彼の肩を抱き締めて
そのまま引っ張り上げるような形になった。
男同士ハグするのは大変だが、彼には失礼だが大きさがハグするには丁度いい。
胸元に肩が来て、抱き締めやすい。
更に華奢だけれども、ほどよいしなやかな筋肉がついた体つきは、力の加減に遠慮がいらない。
思わず、ぎゅうっと抱き締めた。
すると、智の口から息が漏れた。
少し汗ばんだ項から首へと鼻を埋めると、赤ん坊のようないい匂いがした。
いい匂いと背中に回される指先の感触に、不意によからぬ気分になった。
舐める程しか飲んでない酒が回ったのだろうか。
昼間はさほど気にならない布を通して感じる人肌の温かさも、奇妙に妖しく感じられ
さっきまでの喜びの衝動が、いけない方向へ転換してしまいそうだった。
「潤、潤、ギブ！」
背中をバンバン叩かれた。
いや、技かけてるつもりじゃないんだけど。
しかし、その言葉で邪な気分は霧散した。
ああ、危なかった。
大袈裟に手を広げて解放し、笑って見せると、目の前の智は笑って無い。
口をへの字に曲げて、少し顔が赤らんでいた。
「何がそんなに嬉しいんだよ?」
「さぁ、何がでしょう」
「この酔っぱらい！」
ふざける俺に、への字の智の口元はそのうち弛み、とうとう吹き出した。
「もう、潤と居ると爆笑しっ放しだよ。笑い過ぎて明日声出なかったらどうすんだよ」
「連帯責任で俺も休むから」
「バカ！」
智は目の前で大口開けて笑ってる。
ちょっと前屈みになって、足まで踏みならしてる。
他の人が見たら驚くような爆笑ぶりだ。
うーん、やっぱり嬉しい。
ひとしきり笑って、息を弾ませながら、また少し揺らぐ瞳で俺を見た。
その瞳の向こうで、俺の事を考えてくれているのだろうか。
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作者名：ありはる
| 作成日時：2015年11月12日 22時
